2017/10/03

『ゆらめく心に満ちた世界で、君の夢と欲望は叶うか』体験版 感想

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ほのぼの萌えゲーメーカー、CUBEの新作である
『ゆらめく心に満ちた世界で、君の夢と欲望は叶うか』
を体験してみました。

ほのぼの萌えゲーメーカーと書きましたが
今回の作品はサスペンス風の幻想作品という感じで、
これまでCUBEの印象からは大きく外れたものになっています。
南にある離島で美少女たちとの同居生活…と書くと
よくあるエロゲーのようにも感じられますが、
最初から不穏な雰囲気が漂っているのが大きな特徴ですね。

日常会話はほのぼのしている部分も多いのですが、
主人公が死亡したと思わせる場面が何度かあったり、
ヒロインがループを自覚しているような言動を見せたりと
思わせぶりな部分もかなり多いので油断できません。

ただ、頑張って伏線を見せているとは思うのですが、
思わせぶりな会話が多過ぎてテンポが悪く感じる面も。
ことあるごとに「知らないはずなのに…」とか
「前に喋ったっけ?」とか言われるせいで
体験版の最後の方ではげんなりしていたのも確かです。
ここらへんは気合が空回りしているように感じました。

ヒロインに関してもいつもより萌え方面は控えめ。
その代わりそれぞれ重い謎を匂わせる面が強いです。
すみれはこの世界の謎を知った上で利用していますし、
月乃とこのはの歪んだ関係も闇が深そう。

しかし主人公と巴の関係は微妙でした。
本来ブラコン妹って自分好みなはずなんですけど
本作の巴は立ち回りがいまいち好みではなかったですし、
兄である主人公も恋愛への対応が好みじゃない。
恋愛苦手系主人公って個人的にかなり苦手なので
よっぽど強烈な個性がないと好きになれないですね…。
後半で何か主人公の存在をひっくり返すような
どんでん返しがあればいいのですが。


まとめ。
話の仕掛けは凝っていそうではあるものの、
全体的にたどたどしくてパワー不足気味に感じました。
海の底や夜の闇といった幻想的なシチュエーションを
しつこい伏線アピールが台無しにしてしまってるような。
作品に入り込めそうになったところで引き戻される、
の繰り返しで最後まで集中できなかった感があります。
ヒロイン的にストライクな娘がいなかったのも痛い。

オチは気になっているので回避確定ではないですが、
11月に『アオイトリ』が出るならそっちを買うと思います。
2017/09/29

『バイバイ、ブラックバード』伊坂幸太郎 感想

バイバイ、ブラックバード (双葉文庫)
伊坂 幸太郎
双葉社 (2013-03-14)
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5股をかけていた男主人公がドナドナされる前に
5人の女性に別れを告げに行く物語。

5股というとどんなクズ男やねんって感じですが、
いざ読んでみるとこの男、それほど悪くはない人間でした。
もちろん5股をかけるという行為自体はクズですが、
これはそれぞれの女性を元気付けた結果なので、
むしろいいことをしたのではと思えてくるのが不思議。
そう思わせるところがこの男の性質の悪さでもあるのですが。

ハーレム物の主人公の長所で「優しいところ」を
挙げられる展開というものがありますが、
そういう部分を突き詰めて行ったのがこの男なのかも。
ただ、行き当たりばったりの優しさを突き詰めて
5人と付き合うところまで行ったこの男の場合、
最終的に1人を選んでしまうハーレム主人公よりは
一本筋が通っているといってもいいのかもしれません。

5人の女性のバラエティ豊かさもギャルゲちっくですね。
普通、子持ち、怪盗、薄幸、女優と、
微妙にありえそうな女性からまずありえない女性まで
個性豊かで毎回新鮮な気持ちで読むことが出来ました。
基本的にどの女性もいい人ばかりなのですが、
怪盗の人は行動が突飛過ぎて付き合うと疲れそうですね。
個人的には気丈な子持ち女性と、飄々としている女優が好き。

最後の6番目の物語のヒロインが
最初から主人公の隣にいた繭美というのもギャルゲちっく。
怪獣みたいな外見の暴力女が真のヒロインというのは
ギャルゲとしては尖り過ぎですけど、
傍若無人だった彼女が最後にデレる展開は胸に来ました。

最後は主人公が助かったのか分からない感じで終わりますが、
この男、いい奴とはいえ5股野郎には違いないので
助かって欲しい気持ち半分、助かって欲しくない気持ち半分…
なので主人公の行く末をぼかしたのは正解かもしれませんね。
2017/09/28

『ハンニバル戦争』佐藤賢一  感想

ハンニバル戦争
ハンニバル戦争
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佐藤 賢一
中央公論新社
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名将ハンニバルが大活躍した第二次ポエニ戦争の物語。

ハンニバル戦争というタイトルですが、
本作の主人公はハンニバルのライバルであるスキピオ。
前半はまさにハンニバル無双といった感じで、
ローマは戦うたびに負けているという状況なので、
主人公であるスキピオも禿げ上がるほど追い詰められます。
親戚も次々と戦死して暗くなりそうな状況なのに
どこかコミカルで読みやすいのは佐藤さんの作風ゆえか。

後半はスキピオがその知識と才能を開花させるわけですが、
そこまでローマを持ちこたえさせたのがファビウス。
戦術面では無敵だったハンニバルを
戦略で押さえ込んだのがファビウスなわけですが、
こういう戦術を戦略で封じ込める展開は熱いです。
逆に戦略を戦術で突破する展開も好きですけど。
自分はファビウスについてはまったく知らなかったので
この人物のことを知れたのは大きな収穫でしたね。

しかしハンニバルの強さは凄まじい。
相手より少ない軍で包囲殲滅戦を行うとか、
当時の人間からすれば魔法としか思えなかったのでは。
作中でスキピオがハンニバル以前の戦術を学ぶより
ハンニバル自身の戦術を学ぶ方向へと舵を切りますが、
それだけ画期的な戦術家だったというのにも納得できます。

ハンニバルがすぐにローマを滅ぼさなかったことや
ザマの戦いでの敗北の原因がハンニバルの感情としたのは
賛否が分かれるところかもしれませんが、
こういう感情的な人間描写は佐藤さんらしさでもあります。
個人的には感情に振り回される人間は嫌いじゃない。
感情豊かなスキピオと冷徹なハンニバルの対比かと思いきや、
終盤でハンニバルの感情が明かされる流れはお見事でした。
スキピオもハンニバルも晩年は不遇でしたけど
彼らが残した戦いの軌跡は今なお輝き続けていることを
改めて教えてくれる作品でした。
2017/09/19

『セヴンデイズ あなたとすごす七日間』体験版 感想

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LIFE0のデビュー作である全年齢対象ゲーム、
『セヴンデイズ あなたとすごす七日間』を体験してみました。
触った後に全年齢対象だと気付いたのは秘密だ。

呪いのビデオを見た主人公が美少女幽霊に取り付かれ、
彼女の未練を解消する手助けすることになるというこの作品。
これだけならよくありそうな話ですが、
変わっているのはこの幽霊が7人の幽霊の集合体である点。
そして49日の7日ずつを使ってそれぞれの未練を
解消していくというのが物語の大きな筋というわけです。

日常パートは一昔前の泣きゲーに近い印象で、
基本的には軽快な会話で進みつつも
シリアスな別れの気配を感じさせながら進みます。
この手の話だと最後に生き返るにしてもお別れするにしても
今となっては新鮮さは薄いのですが、
そこを意外性や演出でどうカバーするかは気になりますね。
最初のループ展開を見ると単純に成仏させていって
終わりということにはならない気もしますが。

ヒロインが7人と多めなのは難しいところです。
予定通り7日ごとに成仏していくとすると
最後に辿り着くまでに何度も別れを見せられるわけで、
後半に辿り着く頃にはマンネリ化してそう。
キャラが減って雰囲気が重くなると
体験版のワイワイした雰囲気もなくなるでしょうし、
果たして面白さをどう維持していくのか…。

あとは全年齢対象でミドルプライスという点。
自分はエロを重視するタイプではないですけど、
それでもエロがないと寂しい気分になってしまいます。
しかし4800円という価格は気軽に手を出せる範囲…
と思いつつもやっぱりエロありで5800円ぐらいだと
エロゲーマーとしては妙な安心感があるので
できればこの辺りを狙って欲しかったところですね。
表声優さんを使った方が売りやすいのかもしれませんが。


まとめ。
ヒロインを一人成仏させるところまで見せて欲しかったかも。
そこまで見せてくれればヒロインの扱い方も
ある程度把握できて購入するかの判断もしやすかったでしょう。
現時点では、日常会話やキャラクターは悪くないものの、
強烈な魅力に欠ける作品という印象でした。

そんな感じで若干厳しめの評価になっていますが、
今月は特に欲しい作品がないことや価格の安さもあって、
購入候補としては結構高めな位置にいたりします。
先月は恋愛教室を踏んでいるので
2ヶ月連続で踏むのは避けたいところですが…。
2017/09/17

『九十三歳の関ヶ原 弓大将大島光義』近衛龍春 感想

九十三歳の関ヶ原 弓大将大島光義
近衛 龍春
新潮社
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弓術に生涯を捧げた一人の老将の物語。

物語は信長の美濃攻めから始まるのですが、
主人公である大島光義はこの時点で既に53歳。
戦国物としては異例の高齢主人公ではないでしょうか。

一般的な戦国武将で53歳といえば
長男に家督を譲って大御所として差配する年齢ですが、
光義の場合はまだまだ前線の一兵卒。
弓の腕ではそこそこ名が通っているとはいえ、
小者一人を連れてひたすら弓を引くだけの存在です。

面白かったのは作中の大半を一介の射手として過ごした点。
斎藤義龍の部下から始まって龍興、織田信長、信孝など、
次々と主を変えながら天下が統一されるまでの流れを
前線の兵士の視点で描いているのは新鮮でした。
主人への忠義と強い者に付く合理的判断の狭間で悩む姿は
一人の人間として共感しやすかった。

年を取って用済みと思われつつある老兵と
鉄砲の進化によって用済みと思われつつある弓を重ね、
鍛錬によって他人に一泡吹かせる展開も痛快。
90歳でも敵を射倒せる光義は超人だからこそですが、
それでも老人の活躍を見ると明るい気分になれますね。

光義は歴史に大きな影響を与えたわけではありませんが、
一つの道を極めるために死ぬまで走り続けることの
気持ち良さを教えてくれる作品だったと思います。