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『新選組颯爽録』門井慶喜 感想
新選組颯爽録
新選組颯爽録
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門井 慶喜
光文社
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門井さんによる新撰組を題材にした短編連作集。
内容としてはメジャーな人物の短編が3本、
マイナーな人物の短編が3本の計6本になっています。

メジャーな人物は他の作品でも散々書かれているので
独自の描写を出すのが難しいところはありますが、
剣術下手で戦闘力の低い土方や、山南と沖田の関係など、
面白い掘り下げ方をしていて楽しむことが出来ました。
芹沢の暗殺についてはこれまた使い古された素材で
本作でも特に目新しい展開もなかったのですが、
それでも面白いのは芹沢という人物の魅力ゆえですかね。
新撰組序盤の障害としてはこれ以上ない存在感ですし。

一方、マイナー人物側は凡人から見た新撰組という感じで
それぞれ登場人物をより自由に掘り下げています。
安富才助、村山謙吉、尾形俊太郎と各主人公を並べてみても
新撰組に詳しい人でなければまず分からないのでは。
しかしどの人物も地味なりに自分の生き方を貫いている点が
評価されているので、読後には爽快感が残りました。

特に尾形俊太郎の物語は痛快でしたね。
思想もなく給金目当ての文官として新撰組に入り、
度胸も機転もないせいで周囲に馬鹿にされながらも
ひたすら真面目に文筆仕事に励んだ結果が
近藤に評価されるというのはやっぱり気持ちいいです。
そして安定の悪役・武田観柳斎。
この人がかっこよく書かれる時代は来るのだろうか…。

新撰組の本を読む前にはいつも今更感を持つのですが、
読んでみるとなんだかんだで面白いですし、
きっとこれからも読み続けることになるんでしょうね。
本当に美味しい素材だと思います。

テーマ:時代小説 - ジャンル:小説・文学

『情け深くあれ 戦国医生物語』岩井三四二 感想
情け深くあれ 戦国医生物語
岩井 三四二
文藝春秋
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戦国時代の医師を主人公にした珍しい時代小説。

主人公は戦国時代の名医・曲直瀬道三の弟子で、
前半は京都を舞台に忙しい日々を送ることになります。
医師として生活するうちに明智光秀と知り合い、
信長の行動の影響を間接的に受ける描写は面白い。
光秀による延暦寺の焼き討ちや丹波侵攻など、
今まで歴史小説では何度も見たことのあるイベントも
医師の視点だとまた変わった趣きがありますね。

主人公の元武士という設定は医師でありながら
アクションシーンもこなせるのでとても便利です。
武士としての殺し合いに嫌気がさして
医師を目指したという過去もとても分かりやすいです。

ただ、最後のオチは流石に虚し過ぎるような。
過去を捨てて本物の医師として歩き始めた
主人公の決意は立派ですが、それはそれとして
主人公の過去の真相が厳し過ぎると思いました。
せめて最後に嫁が生きていたらなぁ。
終わり方は爽快なんですけど、そこへの経緯がきつくて
読後感も重くなってしまったのがちょっと残念です。

テーマ:時代小説 - ジャンル:小説・文学

『誉れの赤』吉川永青 感想
誉れの赤 (講談社文庫)
吉川 永青
講談社 (2016-06-15)
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戦国時代の赤備えといえば武田、そして井伊が有名ですが、
この小説はそのどちらにも属した男が主人公です。
武田も井伊も歴史小説の主人公としては常連ですが、
その下の赤備えに注目した小説は珍しいのではないでしょうか。

まず冒頭、長篠の戦いで武田の赤備えが崩壊し、
主人公が徳川の捕虜となるところから物語は始まります。
そこから上司を転々として最終的に井伊家に落ち着くのですが、
この辺りの自分の身の置き所が落ち着かない感じは
現代の仕事でいえばプロジェクトごとにチームが解体され
また別のチームで仕事する感じに似ているのかも。

しかしそんな忙しい状況の中でも
主人公が腕と度胸と純粋さで評価されていくのは爽快でした。
最初が頑固だった井伊直政が主人公の純粋さに影響され
少しずつ丸くなっていく展開も微笑ましかったです。
親友との別離も武士と農民という立場の違いだけでなく
お互い譲れない考えがあるので納得できる展開でした。

ただ、ラストはちょっと納得できなかったです。
これはもう完全に好みの問題になるんですけど、
こういう主人公にはハッピーエンドを迎えて欲しかったです。
最後まで人物描写が丁寧だっただけに
井伊主従の今後の成長が楽しみだったのですが、
それが外的要因で断ち切られたのが勿体無くてたまりません。
生きて帰ってこその赤備えって散々言ってたのに…。

とはいえ赤備えという着眼点や人物描写は面白かったですし、
また新たな視点で歴史を楽しむことのできる作品でした。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

『怪物商人 大倉喜八郎伝』江上剛 感想
怪物商人  大倉喜八郎伝
江上 剛
PHP研究所
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一代で大蔵財閥を築いた大倉喜八郎の物語。

大蔵財閥と言えば自分的には
ホテルニューオークラのイメージでしたが、
調べてみるとなかなかの企業が揃っていたんですね。
とはいえ四大財閥と比べると見劣りするのは確かですが。

今回の主人公である大倉喜八郎の魅力は
企業のトップとしてひたすら突っ走るところ。
この強烈なワンマンっぷりが四大財閥に及ばなかった
大きな原因であるようにも感じましたが、
当時未知の世界だった欧米や台湾、果ては中国にまで
命がけで突っ込んで行く姿には男として憧れます。

戦争で儲けることが多かったせいで
世間で死の商人として叩かれることも多かったようですが、
この作品の大倉はそういう世評を屁とも思わず
国のために仕事をしまくるところも清々しい。
更に日本の支援によって中国を発展させることで
将来はお互い利益を得られるパートナーにしようという
壮大な考えも持っているんだから素晴らしいですね。
各国にこういう考えの商人が増えれば
もう少し世界も穏やかになりそうなものですが…。

江上さんの作品は結構当たり外れがあるんですけど、
やはり経済や商人の話になると筆がノるようですね。
今回の作品も死の商人と言われる大蔵の
汚名を晴らそうとする気合が感じられる内容でした。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

『幕末! 疾風伝』天野純希 感想
幕末! 疾風伝
幕末! 疾風伝
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天野 純希
中央公論新社
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オリジナル主人公の視点からの幕末物。
主人公である松浦佐太郎は誰かモチーフがいそうでしたが、
ざっと調べた感じでは見当たりませんでした。

話としては幕末の大まかな流れを追って行くわけですが、
何の取り得もない平凡な主人公視点ということもあって
歴史の大波に振り回されている感が凄かったです。

まずモテたいから志士になるという動機の小者っぷりがいい。
明治維新という日本史の一大イベントに
当時こんな動機で首を突っ込んだ貧乏侍は多かったのかも。
もちろんそのまま命を落とした人も多いでしょうけど。

佐太郎の成長っぷりもちょうどいい感じですね。
最初は剣も学問もダメダメだったものの、
何度も修羅場をくぐり抜けるうちにそこそこの剣士になり、
しかし本物の一流には歯が立たないという、
なんというかそこらにいそうな感じが共感しやすいです。

高杉晋作や坂本竜馬、木戸孝允といった大物と関わりつつも
歴史を変えるほどの影響がないというのもちょうどいい。
自分の目の前を次々と英雄が駆け抜けていくという感覚は
一般人目線だからこそ表現できるものではないかと。
そんな彼が最終的に辿り着いたのが大きな夢ではなく
小さな人間としての主張だったというのも一貫しています。

決して大きな働きをしたわけではないものの、
最初から最後まで精一杯走り続ける爽快感の残る作品でした。

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学