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『ウルトラマンF』小林泰三 感想
ウルトラマンF (TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE)
小林泰三
早川書房
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初代ウルトラマンの後日談的小説…でいいのかな?
自分はウルトラマン本編は見ていないですし
設定についても基本的な知識しか持っていないのですが、
それでも特に引っかかることなく最後まで読めました。
…いやむしろ初代を見ていた方が引っかかるのかも。

話としては、ウルトラマンが去った後も地球には
様々な脅威が飛来し、人類が四苦八苦するというもの。
研究シーンが多いのは面白いですね。
今まで現れた怪獣の研究から怪獣に対抗するための
超兵器や巨大化の開発まで、SFとしても興味深い内容です。

戦闘以外でのイザコザが多かったのも面白い。
人類の組織間での手続きや勢力争いのせいで
怪獣対応が後手に回ってしまうことが多かったですが、
これは初代からそうだったのか気になるところです。

怪獣が出るとまず交渉しようとするのも新鮮でしたね。
戦隊やライダーだと敵が一つの勢力なことが多いですし
毎回交渉する必要なんてないですけど、
ウルトラマンでは様々な知的生命体が存在するのが違いか。

新たなウルトラマン「F」が誕生する流れから
ウルトラマンの本質を掘り下げていたのは良かったですし、
更にその後も続く戦いにまで触れていたりして
まさに今だから書けるウルトラマン小説という感じでしたね。
大人となった今改めてウルトラマンを見たくなりました。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

『猟犬の國』芝村裕吏 感想
猟犬の國 (角川ebook)
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ガンパレで有名な芝村裕吏さんのハードボイルド小説。

今回は予備知識無しで読み始めたんですけど、
マージナルオペレーションのスピンオフ小説だったんですね。
自分はマージナルについては全く知らなかったのですが、
初見でもついていけないほどではなかったです。

ただ、1話と2話以降で雰囲気が変わるのは気になりました。
1話はまだハードボイルドな雰囲気があったのですが、
2話以降は後輩との掛け合いがメインになってしまって
スパイ家業がおまけになってしまったような気が。
個人的には1話の雰囲気が好きだったのでちょっと残念。
2話以降の雰囲気が変わったせいで一冊の本としても
ちぐはぐな印象が残ってしまった感がありますし、
これなら2話から始めた方がすっきり読めたと思います。

あとちょくちょく入る車ネタの微妙さ。
言ってることは分からなくはないんですけど
ネットの車オタみたいな感想で全体的に軽かったです。
主人公がにわか車オタという設定なら分かりますが、
多分そうではないでしょうし単純に余計な描写だったかなと。
エロゲーでよくいる、オタクじゃない主人公が
オタクネタを使う違和感に近いものを感じました。

スパイに関する設定は面白かったんですけど、
どこか小説として洗練されていない感じを受ける作品でした。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

『機巧のイヴ』乾緑郎 感想
機巧のイヴ
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乾 緑郎
新潮社
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我々が知っているものとは微妙に異なる江戸時代を舞台に
カラクリに纏わる様々な出来事が描かれる幻想時代小説。

最初の短編「機巧のイヴ」は人間と機械人形の心を扱った
定番のSFストーリーを時代劇風の味付けで見せた感じで、
これはこれで短編小説としてよく出来ていたのですが、
それ以降の物語でどんどん世界観が掘り下げられていって
短編集としての構成の妙を感じられる作品でした。

タイトルの機械人形・伊武は重要キャラではあるものの、
彼女を起点として多種多様な人物を絡ませることで
読者を飽きさせない物語を見せてくれるのが素晴らしい。
世界観の説明にしても長々と地の文で説明するのではなく、
捔力取り、隠密、天帝といった人物が行動して示すことで
読者にはあっさりと、それでいて面白く見せています。

5つの短編の流れも面白いですね。
最初の2つは機械に関わった人間の不幸を描いていたので
そういう雰囲気のまま続くのかと思いきや、
3つ目ではこの世界観を生かしたサスペンス調になり、
4つ目、5つ目では人間と機械の小さな幸福を描いています。
綺麗に雰囲気が反転する短編集を読んだのは久々かも。
そのおかげで、怪しげな雰囲気の幻想小説にもかかわらず
日常物のような温かい読後感になっているのは興味深い。

機械人形という題材は使い古されたものですが、
単なる江戸時代ではなく架空の時代設定を混ぜることで
より幻想的な雰囲気を強くすることに成功した作品。
この世界観での物語をもっと見たくなる短編集でした。

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『PK』伊坂幸太郎 感想
PK
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伊坂 幸太郎
講談社
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PKといえばサイキックかサッカーを思い浮かべますが、
これはそのどちらにも関係する物語。

今回の物語は3本の短編で成り立っていて、
全ての短編を読むと一つの物語が浮かび上がるという
伊坂さんの本ではよくある構成になっています。

全体的な雰囲気としては明るいSFホラーという感じ。
なんだか矛盾した表現にも思えますが、
得体の知れない力に影響される怖さはよく出ていますし、
それでいて登場人物の行動がどこかコミカルなので
妙に前向きな雰囲気が漂ってるんですよね。
読後に根拠もなく未来はそんなに悪くないのでは、
と思わせてくれる本になっていると思います。

ただ、雰囲気は良かったんですけど、
今回の作中の謎や展開はそれほど強力に感じられず、
先が気になるとまでは行かなかったのは残念。
サッカー、政治家、作家、スーツアクター、
そしてゴキブリという要素の繋げ方は面白いんですよね。
ただ、面白いといっても上手いこと言ったレベルで、
物語としての面白さとはちょっと質が違うかなと。

短編集ならこんなもんなのかもしれませんが、
もっと広げられそうな設定だけに物足りなく思うのかも。
さらっと読むにはいい本かもしれませんが、
歯応えを求めるには向いていない本だと感じました。

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『ブルーネス』伊与原新  感想
ブルーネス
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伊与原 新
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伊与原新さんといえば理系ミステリーなイメージですが、
今回の作品はミステリー色薄めのエンタメ小説です。

テーマとなるのは新型津波感知システム。
舞台となるのは東日本大震災を経験し南海トラフが迫る日本。
主人公・準平の所属するチームは一刻も早い
新型システムの稼動を目指して動き出したものの、
そこには既存のシステムや学閥が立ちはだかることに。

国家レベルのプロジェクトとなると動きが鈍くなり、
革新的なシステムが受け入れられるには
実際の災害で実績を出すしかないというのは分かりますが、
災害から人間を守るシステムを認めさせるために
災害が必要というのはなんとも皮肉ですね。
机上の理論に資金を出せないというのも分かるのですが…。

とはいえ、これは権威側だけの問題ではなく、
災害対策に失敗したとき叩く市民側の問題でもあります。
前例も予算も時間もなく、それでも予報や分析を外したら
ボロクソに言われるんだから守りに入るのも分からなくもない。
この本の終盤のように海保(政府)と学者と民間が
それぞれ自分に出来ることで積極的に力になる心構えこそが
地震大国日本では求められているのかもしれません。

現在の災害対策の限界を見せつつも
その最前線で戦う人々の懸命さをしっかり描くことで
爽やかな読後感を与えてくれる小説でした。

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