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『金閣寺の首』朝松健 感想
金閣寺の首
金閣寺の首
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朝松 健
河出書房新社
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室町時代を舞台にした幻想怪奇小説集。

どの小説も面白かったのですが、
特に面白かったのは京都に取り付かれた大内家の話と、
奇妙な妖怪に取り付かれた足利将軍家の話。
どちらも歴史物として長い目で両家を語りつつ、
その盛衰の裏にあった奇妙な出来事について語っていて、
短編なのに壮大な物語を読んだ気分になりました。
足利将軍家のグダグダっぷりには最近魅力を感じます。

他にインパクトがあったのは首狂言天守投合。
開始時は普通の時代小説っぽいのですが、
話が進むにつれて3人のお姫様と生首たちが
はっちゃけていく姿には妙な爽快感がありました。
ホラー的設定をコメディに一転させた手法はお見事。

一休が様々な怪異に襲われるシリーズは
上記の作品と比べるとインパクトでは劣るものの、
45分時代劇的な安定感のある面白さがあります。
一休といえばアニメの印象が強いですけど、
そういう人ほど、このシリーズの風狂坊主一休には
新鮮な面白さが感じられるのではないでしょうか。

朝松さんの作品は異形コレクションでいくつか
触れていたものの、個人の本として読むのは
初めてだったのですが、かなり満足度が高かったです。
今後はちょっと過去作を漁ってみようかなと。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

『聖者が殺しにやってくる』後藤リウ 感想
聖者が殺しにやってくる (角川書店単行本)
KADOKAWA / 角川書店 (2013-06-17)
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隠れキリシタンの元締めだった旧家を舞台に
一族に関係する人間が次々と殺されていくミステリー小説。

話自体はなかなか凝っていて、隠れキリシタンという設定や
旧家の複雑な血縁関係、14年前に起こった事件との繋がりなど、
それらが最終的に一つに繋がっていくのは面白かったです。
犠牲者たちの猟奇的な装飾もいい雰囲気を出しています。

ただ、キャラクター造形に関しては微妙でした。
ミステリーといえばエキセントリックな探偵と
ちょっとドン臭い助手の組み合わせがお約束ですが、
この作品ではちょっとドン臭い主人公が探偵役なので
捜査パートがいまいち面白く感じられなかったです。
助手役の幼女も生意気でやかましいタイプで、
よく特撮でいる話をかき回す子供に近い感じです。
これはもう好みの問題なので仕方ないといえばそうですが、
普通の探偵と助手の組み合わせならもっと楽しめたかなと。

探偵がしっかりしていないせいで
クライマックスの盛り上がりもいまいちでしたし、
やはり定番の天才探偵とおとぼけ助手という組み合わせは
よく出来ていると実感させられる作品でした。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

『親鸞』三田誠広 感想
親鸞
親鸞
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三田 誠広
作品社
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浄土真宗の開祖として有名過ぎる親鸞の物語。

この作品の親鸞は基本的にはクソ真面目な求道者ですが、
自分でもそれを自覚していて要所要所で
その真面目さから脱却しようとしているのが面白いです。
教義である仏を信じれば悪人でも救われるというのは
当時としては型破りな考えだったわけですが、
本人も修行の場である比叡山を降り肉を食べ妻帯するなど、
端から見ると破戒僧と思えるような行動を取っています。

ただ、こういった行動も師の法然から真面目過ぎると
注意されたせいであり、その結果真面目にハメを外そうと
行動している姿にはどこか愛嬌を感じますね。
最初から衝動のままに行動するのではなく
何事も考えてから行動する真面目さは一貫しています。

しかし肉食妻帯という民衆に近い行動こそが親近感を生み、
じわじわと勢力を拡大していったというのは納得。
当時の民衆や武士からすれば仏に救われるのは
厳しい修行をする僧だけで、それがかえって仏に対する
信仰心を遠いものにしていたのかもしれません。
本作では、親鸞の師である浄土宗の法然や
高野山や善光寺の聖などを絡めることによって、
知的階級だけのものであった仏教が民衆のものへと
少しずつ変化していく流れを分かりやすく描いています。

そんな親鸞も私人としては褒められたものではない。
自分も父親の愛情を受けられなかったとはいえ、
自分の息子に対しても親としては放置同然の対応ですし、
その結果息子が邪教に走ってしまったのは手痛い失敗です。
他人から見ると穏やかで尊敬できる聖人なのですが、
身内に対して激しい愛情を表せなかったのは
彼にとっては大きな欠点だったのかもしれません。

貴族から武家へ権力が移り変わる大きな流れと、
それに伴う末法思想による仏教の変化を絡めつつ、
親鸞という人物を深く掘り下げた読み応えのある作品でした。

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『影の中の影』月村了衛 感想
影の中の影
影の中の影
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月村了衛
新潮社
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日本に潜伏するウイグル人を狙って襲い掛かる中国の特殊部隊。
迎え撃つのは謎のエージェントと武闘派ヤクザ。
今、高層マンションを舞台に血を血で洗う潰し合いが始まる!

という感じでとても分かりやすいアクション小説でした。
主人公はかつて仲間にはめられて全てを失った警察官で、
その後ロシアで教えを受けたスーパーエージェント。
警察内でのゴタゴタを描いた小説は数多くありますが、
そこから超人になるところが月村さんの小説らしい。
ヤクザと手を組んで戦うという展開も熱いですね。
ヤクザめっちゃ死にますけどね!

暗器を使う特殊部隊という設定も漫画ちっくで良い。
敵の面白武器には毎回ワクワクさせられますし、
接近戦が多くなる展開もアクション物として面白いです。
まあ特殊部隊の方も主人公にサクサク殺されまくりますが、
こういうテンポの良さも作品の売りの一つでしょう。

あと珍しいシステマ推し小説でもありますね。
どんな窮地でも主人公がシステマでなんとかしてしまうので
システマの万能感がとんでもないことになっています。
読後にシステマを習得したくなること間違いなしでしょう。

ウイグルの現状とかかなり酷い描写がされていますし
社会派小説としての一面もあるのですが、
それ以上にアクションシーンの切れが目立ってしまって
そこばかり印象に残ってしまったのはいいのか悪いのか。
ともかく、スッキリ爽快な読後感の残る作品でした。

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『銀行支店長、走る』江上剛 感想
銀行支店長、走る
銀行支店長、走る
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実業之日本社 (2015-06-26)
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出世を諦めていた中年銀行員が突如支店長に抜擢され、
自分の職場となった支店の謎を探るビジネスミステリー。

話の流れとしては、真面目に働こうとする主人公に対して、
支店の古参管理職たちや本店の上層部が怪しい動きを繰り返し、
主人公はやる気の溢れる若手社員と改革を目指すという感じ。
銀行が舞台なのでそれなりに専門用語は出てくるものの、
話としては非常に分かりやすい内容になっています。

合併銀行内での勢力争いというのは定番のネタですが、
ほんと小学生レベルの嫌がらせが行われていて笑えますね。
客にとっては大迷惑ですが、読み物としては面白い。
今回の話の格は企業への融資に見せかけた汚職ですが、
こうも簡単に政治家へ献金できるとなるとちょっと怖いですね。
バレないまま闇に葬られた案件も多そうです。

というか今回の事件も闇に葬られているのですが、
汚職ネタでこういう終わり方をするのは珍しいかも。
ただ、銀行へのダメージが大き過ぎて
真面目に働いている社員たちまで路頭に迷わすことを考えると、
闇に葬るという主人公の決断も分からなくもない。
今回は黒幕が上手いこと痛い目にあってくれたので
読後感は悪くないですけど、一歩間違えればバッドエンド。
銀行の闇の深さを感じさせてくれる小説でした。

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