2012/09/07

『松林図屏風』萩耿介 感想

松林図屏風 (日経ビジネス人文庫)松林図屏風 (日経ビジネス人文庫)
(2012/07/10)
萩 耿介

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安土桃山~江戸時代にかけて活躍した
画家・長谷川等伯を主人公にした一冊。
私自身は長谷川等伯について知識がなく
日本画の勢力争いについてもほとんど
知らなかったのですが、この本の等伯は
感情移入しやすくて一気に読めました。

まず本能寺の変から始めたのはお見事。
最初に誰でも知っている一大事件を
持ってきたことで等伯を知らない私でも
いきなりグッと引き込まれた感があります。

この時代で最も有名な画家といえば
狩野永徳ですが、彼に対して無名ながらも
ライバル意識全開な等伯も分かりやすい。
不滅の書でもそうでしたけどこの作者さん、
こういった普遍的な感情を題材にして
物語を読みやすくするのが上手いですね。
その分、時代小説的な雰囲気は薄れますが、
作品としては現代人の共感しやすさを
優先するのも一つのやり方だと思います。

タイトルは松林図屏風となっていますけど
実際の物語は等伯とその息子である久蔵が
「楓図」「桜図」を完成させるシーンが
クライマックスと言ってもいいでしょう。
芸術家同士であると同時に親子として
分かり合うシーンにはホロリと来ました。

ただ、エピローグ的な使われ方をした
「松林図屏風」ですけどこの絵的には
こういう使われ方が相応しい気もします。
私はPC画面で見ただけなのですが
何といいますか、シンプルであると同時に
怖いほどの透明感のある絵なんですよね。
私的には作中の「この世のものとは
思えぬ」という感想よりも「この世の人の
到達点」という感じで、その先には
何もないような恐ろしさを感じました。
これはいつか実物を見てみたい。
絵の前でしばらく固まりそうですけどね。

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