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『天空の舟 小説・伊尹伝』宮城谷昌光 感想
天空の舟―小説・伊尹伝〈下〉 (文春文庫)天空の舟―小説・伊尹伝〈下〉 (文春文庫)
(1993/09)
宮城谷 昌光

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舞台は中国最古の王朝である夏の時代。
地方民族であった商(殷)の領主である湯を補佐し、
夏を滅ぼした名臣・伊尹を主人公にした物語です。
めっさ面白かった。

ここまで時代を遡ると限りなく神話に近いですね。
赤ん坊だった伊尹が桑の木に乗せられて洪水から
逃げることが出来たという出自からして神秘的です。
人々の思考にしても先祖の霊や自然の精霊に対する
恐れ、敬意が非常に強く、祭祀を軽視する王は
下の民から見捨てられてしまうというのが恐ろしい。

そんな時代の中、夏の料理人として雇われた伊尹は
王である桀に命を奪われたり湯からスカウトされたりと
波乱万丈な人生を送っていくことになります。
この本を読む前は単純に夏→商と交代する流れなのかと
思っていたのですがここでもう一つ、昆吾氏という
勢力が絡んで三つ巴になるのが非常に面白い。
三つの勢力間での政治的駆け引きもなかなか高度です。
古代中国侮れねぇ!って感じですかね。
後の殷周革命に登場する勢力の先祖達も登場しており、
そちらを知ってる人ならニヤリとする展開もあります。

面白いのが顎というキャラを配置したこと。
伊尹の親友でありながら湯王に故郷を滅ぼされ
死ぬまで恨みを持ち続けるという架空キャラですが、
聖人である伊尹と違って俗人でありながらも爽やか。
弱っている湯王を助けるシーンはかなり熱いですね。
この顎と伊尹の対比が物語に深みを与えています。

古代中国という普段は縁のない舞台でありながら
各人物が生き生きと描写されているせいか読みやすく、
話の展開も山あり谷ありで最後まで非常に楽しめました。
この時代はもっと知名度を得るべきじゃなかろうか。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

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