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2020/02/01

『マトリョーシカ・ブラッド』呉勝浩 感想

マトリョーシカ・ブラッド (文芸書)
呉勝浩
徳間書店
売り上げランキング: 482,341

過去と現代、被害者と加害者が複雑に絡み合う警察小説。

まず冒頭で一つの死体が見つかるわけですが、
その死体が昔の重大な薬害事件の関係者のものだったり、
その事件に警察の隠蔽案件が関わっていたり、
最有力容疑者が別件で逮捕されて完璧なアリバイを
持っていたりと、次から次へと情報が出てきます。

そんな事件を二人の刑事の視点から追っていくのですが、
この二人の刑事の人格は非常に人間臭いですね。
片方は大会社のお坊ちゃまで甘ったれな面もありますけど、
だからこそ青臭い正義論で突っ走ることができる。
過去を暴いて警察をクビになっても親の会社に入るから
いいやって開き直りは初めて見たかもしれません。

もう一人の刑事の、病気を持つ息子を持つが故の
殺されようと薬害事件関係者は許せないという気持ちと、
刑事としての殺人事件への責任感に揺れる心理も分かる。
お坊ちゃまだけなら青臭過ぎる話になるところですが、
こういう組織を重視する主人公と対比させたのは上手いです。

しかし刑事組がなんだかんだで悪い奴がいないのに比べて
事件の黒幕や真相はあまりにも闇が深かった。
終盤に判明する黒幕の動機はあまりにも身勝手ですし、
薬害事件の真相も救いがなさ過ぎて虚無!という感じ。
もちろんいい意味でダメージでか過ぎて虚無なのですが、
久々に邪悪な黒幕を見ることができた満足感があります。
後味が悪い作品を読みたいときにはオススメな作品ですね。

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