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2020/01/11

『もう「はい」としか言えない』松尾スズキ 感想

もう「はい」としか言えない
松尾 スズキ
文藝春秋
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内容は松尾スズキさんらしい混沌とした中編が2つ。
どちらも主人公は中年おっさん脚本家である海馬です。

まず一本目は海馬が「世界を代表する5人の自由人」に選ばれ
授賞式のためにパリに行くというもの。
しかし授賞式に行く理由が妻と毎日セックスするのがつらくて
それから逃れるためというのがかなり酷い。
毎日セックスすることになった原因が
海馬が浮気したためというのも酷いですが。

しかし授賞式に出るためにかなりの不自由を強いられて、
一方で賞を作った富豪は自殺することで自由を勝ち取るという
なんというか、馬鹿なのに妙に深いところがなくもない。
まあ松尾さんの小説はいつもこんな感じですが。

2本目は海馬の過去の話。
ちょっと変わった少年としてちやほやされたことにより
小学生にしてちやほやされることが生きがいになった海馬少年。
そんな彼を中心として小学生特有のシンプルでありながらも
容赦ない人間関係が面白おかしく描写されています。
自分より下の人間は付き合いやすいとか刺さる人もいるでしょう。

表題となっている「神様ノイローゼ」というのは
いつも神様に監視されているという被害妄想のことですが、
作中での神様ノイローゼの扱いは割と軽めで
むしろ重大なのは少年水死体事件ですね。

この少年水死体事件というキーワードがことあるごとに
出てくるので読者としては非常に気になるわけですが、
その真相が明かされるのはこの中編の最後。
しかも最高にくだらない真相というのが松尾作品らしい。

基本的には頭空っぽにして楽しめるおバカ小説ですが、
そんな中に人間の本質を鋭く抉った部分があるのが
松尾作品の面白さなんですよね。

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