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2019/12/05

『本懐』上田秀人 感想

本懐
本懐
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上田秀人
光文社
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戦国時代以後の武士の切腹を扱った短編集。
話としては意外性のある物とよくある展開のものが半々。
よくある展開の作品も面白いのは確かですが、
意外性のある作品のインパクトには敵わない感じですね。

まず初っ端の大石内蔵助の話が面白い。
吉良を討った後の切腹直前の話なのですが、
ひたすら愚痴りまくって切腹するのが新鮮でした。
刃傷沙汰を起こした浅野内匠頭の愚かさを貶しまくり、
敵討ちを目指す部下たちの愚かさも貶しまくり、
自分の息子が若くして切腹する哀れさを嘆く。
ここまで後ろ向きな内蔵助は初めて見ましたよ。

ただ、その理屈自体はとても納得できるもので、
筆頭家老の仕事を平和に、忠実にこなしていたのに
その生活を壊した浅野内匠頭を憎むのは当然ですし、
自分の息子を洗脳して敵討ちに巻き込んだ
部下たちを恨むのもまた当然なのかもしれません。
自分の息子も家老として穏やかに生きて欲しかったという
親としての願いを否定するのはちょっと難しいです。

もうひとつ面白かったのが西郷隆盛の物語。
西郷隆盛といえば堂々とした英雄な印象がありますが
この作品では死んだ目をしてひっそりと生きる
人間として描かれているのが新鮮ですね。
龍馬の「小さく叩けば小さく響く」という西郷評を
西南戦争の結末に結びつけているのも感心しました。

狩野融川、堀直虎はどちらもよく知らなかったので
意外性はなかったのですが、その自尊心や良し。
織田信長と今川義元は面白かったんですけど
話自体はよくあるものだったと思います。
今川義元だけ切腹しそこなったのは意外でしたけど、
義元の性格は割とテンプレ寄りでしたしね。

そんな感じで切腹を扱った珍しい短編集ですが、
大石内蔵助と西郷隆盛の話は特に面白かったですね。
意外な掘り下げ方が見たい人にはオススメな作品です。

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