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2018/10/11

『生存者ゼロ』安生正 感想

生存者ゼロ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
安生 正
宝島社 (2014-02-06)
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突如連絡が途絶えた洋上基地へ向かった
自衛官が見たのは血塗れの姿で横たわる死体の山。
状況から未知の細菌による感染症が疑われ
各機関が警戒に当たるものの、それをあざ笑うかのように
北海道でも大量の犠牲者が発生し…という感じなので
最初はパンデミック物かと思ったのですが、騙されました。

血塗れの死体と書かれるとどうしてもまずはエボラが
思い浮かびますし、実際序盤の描写はそちらを思わせます。
その狙い通りパンデミックだと思ってしまったのが悔しい。
そこから人を襲っていたのが変異した蟻だと判明し、
自衛隊の総力上げた防衛線へと雪崩れ込んでいく
スピード感は見事で、一気に最後まで読んでしまいました。
外敵からの侵略として自衛隊が応戦するクライマックスは
単なるパンデミック物を超えた迫力があります。

人物描写としては感染症学者の富樫が良かったですね。
優秀な学者でありながら権力闘争に敗れ研究所から追われ、
妻と息子を失ってコカイン中毒になりながらも
理性と妄想の狭間で足掻く描写には力が入っています。
ヤク中といえば麻薬を求めるイメージですが、
この男の場合は麻薬で狂った自分に戻るのが怖くて
劇薬である精神安定剤を求めているのが面白い。
緊急時における人間の善と悪を体現した人物として、
この物語に奥深さを与えてくれる存在だったと思います。

ちょっと気になったのは病気で血塗れになるのと
蟻に食い殺されて血塗れになるのとだと
傷跡を調べればあっさり違いが分かるのではという点。
パンデミックと虫害では差が大き過ぎる気がします。
が、そこはまあ意外性の面白さがあったので
自分的にはスルーしてもいいかなと思えるレベルでした。

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