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2018/08/09

『足利兄弟』岡田秀文 感想

足利兄弟
足利兄弟
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岡田 秀文
双葉社
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南北朝時代初期の動乱を足利尊氏の正室である登子と、
尊氏の弟である直義の視点から描いた歴史小説。

序盤は尊氏の対鎌倉幕府戦争がメインになるのですが、
それを北条家の血を引く登子視点で見せているのが面白い。
北条側の視点なので幕府が倒れるという発想がなく、
尊氏の行動が信じ難い裏切りに見えるのが新鮮ですね。

倒幕後は直義視点が多くなり、対南朝戦、
そして足利家内部の権力闘争がメインとなります。
登子も直義もその場のノリで調子のいいことを言う尊氏に
振り回され続けるという点では共通しています。

尊氏の精神的なおかしさについては
歴史小説でもおいしいネタとしてよく使われていますね。
感情の起伏が激しくある種のカリスマがあるものの、
半身であるはずの直義や高師直も切り捨てる非情さもある。
本作では直義も師直も尊氏を排除するか迷うものの
結局は情に負けて実行できないまま終わるのですが、
それを実行できるのが尊氏の怖さなのでしょう。

ただ、敵を滅ぼせる容赦なさを持っている一方で
自分自身が滅ぼした北条家や直義のために
周りが引くほど悲しんで泣けるのも尊氏の不思議さ。
こういうところがあるから直義や師直も
尊氏を見捨てることが出来なかったんでしょうね…。

足利尊氏、正直近くにいて欲しくない人物ですが、
小説の題材としては非情に面白い人物だと思います。

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