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2017/11/15

『決戦!関ヶ原』 感想

決戦!関ヶ原
決戦!関ヶ原
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葉室 麟 冲方 丁 伊東 潤 上田 秀人 天野 純希 矢野 隆 吉川 永青
講談社
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関ヶ原をテーマに7人の作家が書いている短編集。

まずトップバッターの伊東潤さんの徳川家康が面白い。
三成と家康が豊臣家の武断派七将を排除するために
手を組む場面から始まるのですが、
この機にお互いがお互いを除こうとしてるから油断できません。
陰謀が動き出してからのグダグダっぷりも面白い。
伏見城を無血開城する予定が鳥居元忠の暴走で城兵が玉砕して
家康が頭を抱える場面では笑いました。
その後も上手く行かずたまに家康が切れてるのが面白過ぎる。
伊東さんの作品では珍しいコメディ色の強い作品ですが、
またこういうのを読みたくなるぐらい楽しめました。

吉川永青さんが取り上げたのは可児才蔵。
関ヶ原で抜け駆けした井伊直政を福島正則陣営の可児才蔵が
追い回すというこれまたコメディ色の強い作品で、
お馬鹿な才蔵、正則と直政のクールな対応が好対照でした。
伊東さんの作品と吉川さんの作品は明るめですけど、
これは明るい話をわざと前半にまとめたのか偶然なのか。

天野純希の話は織田有楽斎が主人公。
腰抜けという汚名を晴らすために参戦しながらも
荒事には向いていないため無様を晒す有楽斎ですが、
大軍に翻弄される小勢という雰囲気はよく伝わってきました。
徹底して小人物として描かれる有楽斎も共感しやすかった。

上田秀人の宇喜多秀家の話はひたすら暗かったです。
徳川に付いた福島や加藤の恩知らずっぷりを愚痴り、
三成の机上の空論に呆れ、宇喜多から出奔した家臣達に怒る。
ひたすら文句と自嘲を繰り返し、あのときああすればと
言い続ける歴史小説というのはこれはこれで新鮮ですね。

矢野隆さんの島津義弘の話はこの本で一番好きです。
家康からも三成からも軽んじられた義弘が、
石田と徳川の戦いが終わった後に
島津と徳川の戦いとして仕切り直す拘り。
この頑固さこそ薩摩武士という感じで燃えました。

冲方丁さんの主人公は小早川秀秋。
秀秋が主人公の小説はいくつかありますが、
ここまで実利重視の人物として描いているのは珍しいかも。
とはいえ冷たいわけではなく、国を豊かにするということを
冷静に考えた結果家康に付くという考え方は面白かったです。

ラストは葉室麟さんの石田三成。
毛利の狙いが三成と家康の共倒れだったら…という発想を広げ、
三成が毛利を巻き込んで負けることによって
豊臣家の延命を図ったという筋書き。
これ自体は面白い発想でしたけど、最終的に徳川によって
豊臣家が滅ぼされてるせいでちょっと苦しかったかな。
もう一捻りあれば斬新な真相として素直に驚けたんですけどね。

そんな感じで実に読み応えのある短編集でした。
作家名を見てピンと来る人なら損はしない本だと思います。

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