2017/08/31

『戯史三國志 我が土は何を育む』吉川永青

戯史三國志 我が土は何を育む (講談社文庫)
吉川 永青
講談社 (2013-11-15)
売り上げランキング: 555,417

三国志の武将では地味な立場の廖化を主人公にした物語。
この廖化、前半生が謎な人物ではあるのですが、
この本ではむしろその前半生を重視し、
魏呉蜀を巡る冒険譚として描いているのが特徴ですね。

物語は少年だった廖化がまだ小物だった劉備に
拾われるところから始まるのですが、
放浪する劉備について回ったり、劉備と分かれて
今度は呉の程普に拾われたりしているうちに
一人前の武将として成長していきます。
恋愛や友情といった王道成分が多いこともあって、
前半は爽やかな気分で読むことが出来ました。

後半、劉備たち三兄弟が死んで孔明が踏ん張り、
更に孔明が死んで姜維に託されるという流れは
いつもの三国志なのですが、序盤から劉備の傍にいて
一人残される廖化の感じる寂しさは共感しやすかったです。
この一人残される感覚は序盤から読み続けた読者が
主役級に次々退場されていく寂しさに近いのでは。

年老いた廖化が最後に得た、いつまでも3国を
分立させておくべきではないという結論にも納得。
3つの国のそれぞれに大事な人がいる廖化だからこそ、
この3国状態の危うさを誰よりも実感できたのでしょう。
そう思いながらも、悪足掻きを諦めない姜維を
見捨てられないところは廖化の人の良さか。

廖化はもともとそれほど活躍した人物ではないですし、
それは主人公となったこの本でも同じなのですが、
英雄たちの傍らにあり続けた凡人として
これまでの人生経験から一つの答えを見つけたのは
一人の人間として立派な生き様だったと思います。
この作品は三国志の脇役たちを主人公に据えた
シリーズ物のうちの一作という扱いらしいですが、
他の作品にも手を出したくなりました。

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