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『悪名残すとも』吉川永青 感想
悪名残すとも
悪名残すとも
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吉川永青
KADOKAWA/角川書店 (2015-12-25)
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陶晴賢といえば主君に謀反を起こした挙句に
毛利元就という超有名人に討たれてしまったせいで
どうしても噛ませ犬という印象が強いのですが、
この本ではそんな晴賢をしっかり主人公として描いています。

この本の晴賢は主君・大内義隆を敬愛する一人の熱血漢。
かつて衆道の関係にあった義隆を盛り立てるべく、
若輩ながらも必死に大内家を差配していきます。
しかし息子を失った大内義隆が政務を放棄したせいで
家中では文治派と武断派が内戦勃発寸前になり、
それを止めるため愛する主君を除く決断を迫られることに。

ここに至るまでに何とか穏便に済まそうとする
晴賢の苦労描写には力が入っているせいで
晴賢へ自然に感情移入できるのは良かったですね。
何かと悪人扱いされる晴賢ですが、
実際、義隆の行動によって国が乱れていたのは確かですし、
彼の謀反自体はむしろ正しかったと言えなくもない。

この物語のもう一人の主人公である毛利元就。
後に晴賢を討つことになる彼が、
最初は晴賢の才能に惚れ込んでいたという設定は面白い。
元就が晴賢に期待したのは大内という古い器を
破壊することであり、大内を維持しようとする晴賢に
失望して自分で立つことを決意する流れも面白いです。
作中では年寄り側である元就が最も先進的な
下剋上的思考を持っていたというのは皮肉ですね。

結局、晴賢は自らが頂点に立つこともできず、
大内義長を旗頭にしても大内家中を統制できなかったですし
器がその程度の大きさだったと言われればそれまでですが、
そんな晴賢が何とか主君と和解しよう、
何とか大内家だけでも残そうと足掻く姿には
つい応援したくなるような懸命さが感じられました。
もともと辞世の句が好きな武将だったので、
今回魅力的な描写がされてたのはとても嬉しかったです。

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

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