2017/08/03

『応仁秘譚抄』岡田秀文 感想

応仁秘譚抄 (光文社文庫)
光文社 (2015-02-27)
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応仁の大乱を4人の人物の視点から見た短編集。

最初の主人公は足利義視。
この人が兄である足利義政から将軍職を譲られると言われ
ホイホイ乗ってしまったのが全ての始まりですが、
実際自分がこの誘いに乗らないかといわれるととても難しい。
その後も兄や細川勝元の都合に振り回され
迷走してると思われても仕方のない行動を取るわけですが、
この話では孤立無援な義視の心情描写が上手いせいで
義視の不安定な行動にいちいち共感してしまいました。

次の主人公である日野富子でもそれは同じ。
将軍の妻として、将軍の母として必死に頑張りながらも
決して報われない富子の姿はただただ哀れでした。
汚い手段をいくつも使っているとはいえ、
こういう真っ直ぐな人間は嫌いにはなれません。
しかし息子の義尚のために応仁の乱を起こしておきながら
その義尚が早死にしてしまうんだから歴史は面白い。

3人目の主人公は細川勝元。
義視視点では頼りにならない後見者だった彼ですが、
義政や富子、山名宗全といった妖怪相手に
沈着冷静に一手一手を打っていく…とみせかけて
予想外の出来事が起こりまくる状況には同情できます。
応仁の乱があまりに長引き過ぎて乱の後半では
ひたすら早期終結させようと焦っている姿にも共感できる。
乱を早期に終結させようとする方針は
義視と同じなのにまったく協力できないのも面白かったです。

ただ、最後の義政の物語は微妙でした。
足利幕府を破壊するためにわざと政務を投げ出し
応仁の乱を長引かせたという真相は強引過ぎた感があります。
これまでの3人が感情的な行動を見せていたのに対して
義政にはそれがなく、黒幕役のロボットにしか見えなかった。
この義政を自らを殺して目的を達成した傑物と見るか、
ただの性格の悪い外道と見るかは難しいところでしょうね。

個人的には後味の悪い結末でしたけど、
応仁の乱というグダグダな事件を人間として共感しやすい
感情の流れを中心に上手くまとめた一冊だと思います。
義政がもう少し人間的な感情から黒幕をやっていてくれれば
文句なしだったのでそこだけが惜しいですね。

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