2017/03/31

『宇喜多の捨て嫁』木下昌輝 感想

宇喜多の捨て嫁
宇喜多の捨て嫁
posted with amazlet at 17.03.30
木下 昌輝
文藝春秋
売り上げランキング: 160,067

戦国時代の梟雄として名高い宇喜多直家の物語。
本作は6本の短編から成り立っていて、
時には直家本人、時には直家の周りにいた人物の視点で
宇喜多直家という人物について描かれています。

一般的には裏切りや暗殺のイメージが強い直家ですが、
この作品ではそこに至る経緯を掘り下げているのが面白い。
若い頃の直家は真面目で誠実な人物として描写され、
そんな彼が主君である浦上宗景の陰謀によって
家中の粛清に加担させられた結果が数々の暗殺という結論。
戦国時代に限らず有力家臣を粛清する主君は多いですし、
これはなかなか説得力のある掘り下げ方だと思います。

そして対抗出来る家臣がいなくなった結果、
直家の存在が大きくなり過ぎて
宗景自身が制御できなくなるというのもまた納得の結果。
便利な道具だった人物がいつの間にか制御不能な化け物に
変化してしまうというのは個人的には大好物です。
直家が稀代の謀略家として大成していくとともに
奇病・尻はすによる膿と腐臭が増えていくという演出も良い。

短編の配置構成も見事で、最初に直家の娘の視点で
直家の最期までを見せ、そこから直家の子供時代に戻り
直家の成長と挫折、そして闇に飲み込まれていく姿を描写し、
最後は別視点で再び直家の最期を見せるという、
最初と最後が繋がる美しい流れになっています。
老婆の正体が分かると切なさが溢れるのには参った。
ラストの一文による哀しい読後感もたまりません。

宇喜多直家は汚い暗殺を多用する反面、
部下には優しく宇喜多軍団は鉄の結束を誇ったといいますが、
その二面性を納得の行く形で見せてくれる作品でした。

コメント

非公開コメント