2016/07/21

『グレイ』堂場瞬一 感想

グレイ
グレイ
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堂場 瞬一
集英社
売り上げランキング: 513,300

貧乏大学生だった主人公は調査会社のカリスマ所長に見込まれ、
契約社員としてアンケート調査の手伝いを始めたものの、
調査を続けて行くうちに会社の裏の顔が見え始め…。
という感じの小説で、バブル前夜の東京を舞台に
今ではメジャーとなった情報型犯罪の原点が描かれています。
ジャンルとしては社会派小説かな?

路上でアンケートをとって、その情報をパソコンで管理し
商品開発や詐欺に生かすというのは今でも通じる手法ですね。
ネットがないと路上アンケートが重視されるのは分かりますが、
少し前まではそういう時代だったと考えると不思議な気分。

今回面白かったのは主人公の身の振り方ですね。
最初は純朴な青年だったのが金儲けの魅力にとり付かれ、
最後は度胸と知性を備えた怪物として野に放たれる。
中盤、会社に裏切られ悔しがるところまでは普通なのですが、
そこから異常な執着心を見せはじめ、自分以外の全てを
踏み潰して生きることを決意するというのは予想外でした。
最初は主人公のことを応援していたのですが、
それが「あ、こいつ生きてちゃ駄目なヤツだ」というように
反転してしまうのは妙な快感がありますね。

ただ、惜しかったのは主人公が若過ぎることもあって
悪堕ちしてもイマイチ迫力がなかった点。
黒幕まで辿り着くまでの流れもご都合主義に頼るところが多く、
主人公の能力的な怖さについてはあまり感じられなかったです。
ここは話の仕掛けにもう一捻り欲しかったですね。

とはいえ、悪堕ちを楽しめる貴重な一冊だったのは確かですし、
この独特の後味が好きな自分には満足度の高い作品でした。

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