2016/06/16

『阿修羅の西行』三田誠広 感想

阿修羅の西行
阿修羅の西行
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三田 誠広
河出書房新社
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かの有名な西行法師を主人公にした歴史小説。
西行といえばまず歌人としての名声が思い浮かびますが、
この小説では冒険小説ばりの活躍を見せてくれます。

舞台となる時代は平家台頭から鎌倉幕府が確立するまで。
武家の時代になりつつあるとはいえ
京都には稀代の謀略家である後白河法皇が健在ですし、
武家と公家の思惑が絡み合った非常に混沌とした状況です。l
時代の権力者を潰し合わせてその間でしぶとく生き残る
後白河法皇の黒幕っぷりには改めて脱帽ですよ。

この小説の西行は主に後白河法皇の意図を汲んで
平家と源家に関わっていくわけですが、
根が真面目で情の深い性格だけに双方に情が移ってしまい
胃が痛くなるような生き方を強いられることになります。
藤原流の武術の達人として崇徳上皇を助け出したり
義経に武術を教えたりする展開にはワクワクしましたけどね。

作品全体に諸行無常感が溢れているのは
平家の隆盛から滅亡までを身近に見ることになるからか。
野心家で友人でもあった清盛がその夢を実現した福原京。
それがあっという間に源氏によって灰燼と帰すのは
なんともいえないやるせなさを感じずにはいられません。

しかもそれを成したのが自分の弟子である義経で、
その義経もあっさり頼朝に討たれるとなると
全てが虚しくなってしまう気持ちも分からなくもないです。

そんな感じで全体的に空虚な雰囲気が漂ってはいるのですが、
時代の激動期だけあって物語の起伏は多いですし、
予想以上にアクティブな西行の活躍もあって
最後まで楽しむことのできる作品でした。
三田さんの歴史小説は人物選択が地味なイメージだったので
これまでは敬遠していたのですが、
こういう作風なら今後もどんどん読んでいきたいです。

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