2016/04/07

『沈黙の檻』堂場瞬一 感想

沈黙の檻 (中公文庫)
沈黙の檻 (中公文庫)
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堂場 瞬一
中央公論新社 (2013-08-23)
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犯罪とはなんなのか考えさせられる刑事小説。

本作の発端となる殺人事件は既に時効を迎えていて、
その真犯人として運送会社の社長である末松が
かつての共犯者から名指しされるところから物語は始まります。
警察としては事件を追うことは出来ないものの、
マスコミはこのネタに食いついたせいで騒ぎは大きくなり、
その圧力に屈する形で刑事・氷室が捜査を始めることに。
法の番人であるはずの警察が法で保障された時効を
破らなければいけないというのはなんとも皮肉ですね。

事件発生当時から限りなく黒に近いといわれた末松ですが、
末松を知る人からは好意的な評価が出てくるばかりで、
氷室自身も末松の人柄に惹かれていくことに。
氷室は作中で何度も「聖人でも犯罪を起こす」と考えていますが、
何度も考えるところが自分に言い聞かせているように見えます。

末松の「ノーコメント」を繰り返すという対応は新鮮。
これを見たマスコミは殺人犯だと受け取った一方で、
彼を知る人物は無実だと受け取るというのがややこしい。
本作は最初から最後までこの「ノーコメント」に
振り回された作品だと言えるでしょう。
基本的に同じところをグルグル回っているような作品なので
この前に進めないイライラを楽しめるかどうかが
この作品の評価に直結するのではないでしょうか。
自分はこういう鬱々とした雰囲気が好きなので楽しめました。

氷室の最後の選択は刑事として正しくないのかもしれませんが、
人間としてはどうしようもなく共感してしまうのです。

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