2016/02/18

『天地雷動』伊東潤 感想

天地雷動 (単行本)
天地雷動 (単行本)
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伊東 潤
KADOKAWA/角川書店
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かの有名な長篠の戦いを題材にした歴史小説。
物語は信玄死後から始まり、武田勝頼、徳川家康、羽柴秀吉、
そして武田に属する地侍の帯刀という4人の視点で語られます。

勝頼の物語は信玄の残した宿老とのいざこざがメイン。
信玄を崇拝する宿老たちは勝頼を軽く見て言うことを聞かず、
また勝頼も宿老を説得できるだけの実績がない。
まあこの時代の複雑さを考えると思い通りやれたところで
生き延びることができたか怪しいところではありますが、
思い通りできない悔しさはヒシヒシと伝わってきました。

とはいえ、それに関しては家康も似たようなもの。
幼い頃から今川で育てられた家康にとっては
三河衆は味方であってもどこまで信用できるか怪しいですし、
弱みを見せれば後ろから撃たれる可能性すらある。

それでも最終的に家康が勝者になれたのは我慢強さの差でしょう。
小さい頃から人質生活を送り、強者の下で耐え続けた家康には
言うことを聞かない三河衆ですら貴重な味方。
信長や秀吉ほどの才はなくとも、やけを起こさず隙を見せず、
長篠での一発逆転を待ち続ける姿勢は見事でした。
愚痴ばかり言ってて決してかっこ良くはないんですけど、
そういう男が勝つ姿には妙な爽快感があるんですよね。

肝心の長篠の戦いはというと、結果的には快勝したとはいえ
武田の強さも十分に見せ付けてくれる内容でした。
大量の鉄砲を買い集めると同時に武田への弾薬供給を断ち、
堅固な野戦陣を構築しつつ武田の3倍近い人数を投入する。
この非常に手の込んだ戦略こそ信長の武田への評価の証でしょう。
勝頼も決して無能というわけではないのですが、
信長の用意周到さと比べるとどうしても甘く見えてしまいます。
まあ信長の戦略が深過ぎるということもありますが。

長篠の戦いという戦国屈指の有名な戦いについて
武田、徳川、織田の各陣営の前準備の段階から丁寧に描写し、
織田方が勝つべくして勝ったということを
すんなり納得させてくれる作品でした。

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