2016/02/06

『天皇の刺客』高橋直樹 感想

天皇の刺客
天皇の刺客
posted with amazlet at 16.02.06
高橋 直樹
文藝春秋
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日本三大仇討ちの一つである、
曾我兄弟の仇討ちを題材にした歴史小説。

三大仇討ちといえば赤穂浪士が圧倒的に有名で、
それと比べると他の2つはマイナーな印象がありますね。
自分も曽我兄弟についてはほとんど知らなかったのですが、
この本は事の発端から結末まで丁寧に説明してくれていたので
この事件についての流れをしっかり掴むことができました。

しかしそこは小説。
ただ仇討ちを語るだけではなく、同時期の様々な事件と
絡ませることで話を膨らませているから面白い。
まずは曽我兄弟の祖父である伊東祐親の話から始め、
祐親の娘が源頼朝と結ばれ子供を作っていた点に注目し、
祐親が頼朝の子供を殺したことから頼朝が祐親を殺し、
更に曽我兄弟が祖父の仇である頼朝を狙うという関係。
一歩間違えば身内になるはずだった頼朝と曽我兄弟の関係が
ドロドロに拗れていく姿にはげんなりさせられます。

それに加えてこの時代には源氏の直系である源範頼や
後に幕府に対して半期を翻す後鳥羽天皇が健在。
曽我兄弟の仇討ちの際の対応で失敗したことによって
範頼が失脚させられたのは有名ですが、
後鳥羽天皇を頂く京都朝廷の暗躍まで絡ませることで
ただの仇討ちを国家規模の陰謀レベルまで引き上げています。
こういう話の膨らませ方は実にロマンがあって良い。

鎌倉時代の血を血で洗う政治闘争の幕開けを感じさせつつ、
それらの陰謀と兄弟の固い絆を対比させることで
一抹の爽やかさのある読後感を残してくれる作品でした。

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