2015/12/05

『モーダルな事象 桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活』奥泉光  感想

モーダルな事象 (本格ミステリ・マスターズ)
奥泉 光
文藝春秋
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ユーモアミステリー、クワコーシリーズの一作目。
最近、短編集の方を読み直す機会があったので
その原点である一作目も改めて読み直してみました。

短編集がユーモアミステリーに徹しているのと比べると、
やはりこちらは奥泉さんお得意の幻想小説分が強いですね。
しょーもない作家のしょーもない作品の解説を書いて
それが何故か大ヒットしてしまうという導入部は
短編のゆる~い雰囲気にも通じるものがありますが、
そこから現実とも幻想ともつかぬ流れになっていくのは
奥泉さんの長編ではお馴染みの展開だと言えるでしょう。
ロンギヌス物質やアトランチィスといった
奥泉長編共通のキーワードも登場していますし。

面白いのはクワコーがどんどん異界に飲まれていく一方で、
探偵夫妻が真っ当なミステリーをしているところ。
それほど鋭くないとはいえ堅実に推理しているのに、
クワコーの巻き込まれている状況がおかし過ぎるせいで
完全に的外れになっているのが実にアンチミステリー。
この探偵夫妻視点があるおかげでクワコー視点の異様さが
増幅されているのは見事な構成になっていたと思います。

しかしこのラストだと短編集に繋がらない気がしますけど、
そこは並行世界的なもので深く考えたら負けなのか。
それとも駄洒落は放り出してあっさり教授に復帰したのか。
まあ後者にしてもその適当さがクワコーらしくはあるのですが。

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