2015/11/26

『終末の鳥人間』雀野日名子 感想

終末の鳥人間
終末の鳥人間
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雀野 日名子
光文社
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舞台は田舎の高校の零細人力飛行機部。
熱血教師の強引な勧誘によって入部させられた
俊晴とエースケは最初こそ嫌々活動していたものの、
次第に部活にのめり込んでいくことに。
仲間も増え名門飛行機部とも知り合いになり、
このまま皆で熱い青春を突っ走る…のかと思いきや、
戦争に巻き込まれた日本が戦時体制へ移行したことで
平和な学園生活は唐突に終わりを迎え、
日本は労働を強制されるディストピアへと変貌していきます。
…いやほんと、前半と後半の落差が酷い(褒め言葉

前半は青春部活物の王道を丁寧にやってるんですよね。
部活を嫌がっていた主人公の変化に仲間集め、
先生の過去にしてもしっかりとお約束を踏まえています。
これだけならよく出来ているけど平凡な物語なんですが、
そこにちまちまと挿入される国際情勢が
絶妙に不安を煽ってくるから先が気になってしまうのです。
読者としては後半は戦争になりそうな気配を
感じ取ることは出来るんですけど、
それでも唐突に感じてしまうのは前半の爽やかさと
後半の閉塞感の落差についていけないからなのか。

それはそれとして後半もディストピア物として面白かった。
非難の名目で家族とも友人ともバラバラにされて
強制労働をさせられ心が死んでいく描写がいちいち細かくて
読んでいて非常に疲れる内容になっているんですよね。
そして最後は日本の危機に対して飛行機部が集結し、
ミサイルで飛行機を撃ち落とすために行動を開始する。
これもまた王道の流れだったと言えるでしょう。

とはいえ気になった点がないわけでもない。
最も大きな点はヒロインであるアヤちゃんの超能力です。
この娘、ホントに天使かと思うぐらいいい娘なんですけど、
超能力設定が万能過ぎて便利キャラ扱いなんですよね。
青春物とディストピア物が堅実な話を見せていただけに
時折出る超能力ネタが浮いてる印象を受けてします。
まあ、普通なら色々と下準備のいる展開を
超能力で一発解決しているのでテンポはいいのですが。

あと、これはもう完全に好みの問題ですけど、
自分としてはハッピーエンドまで書いて欲しかったかな。
今のままでも綺麗な終わり方ですし
ここから先が蛇足になる可能性もあるのですが、
そこまでの閉塞感が強かっただけにそれを完全に覆すような
単純な明るさで〆て欲しかったという気持ちがあります。
まーこれに関しては自分が今、リアルで気が滅入っていて
極端に耐性が下がっているのが大きいですけどね。

とまあちょっとケチを付けてみたものの、
前半と後半をまったく異なる雰囲気にしながらも
一つの作品として纏まっているのはお見事。
この急転直下の展開、ちょっと癖になりそうです。

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