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『ここを出ろ、そして生きろ』松原耕二 感想
ここを出ろ、そして生きろ
松原 耕二
新潮社
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世界の紛争地域で活躍するNGOを題材にした物語。
話の構成としては、主人公であるさゆりが
かつて恋人だったジャンとともに訪れたエルサレムの地で
昔のことを振り返っていくという形になっています。

この本、表紙は明るい向日葵の写真ですし、
「生きろ」というからには前向きな内容の物語かと
思っていたのですが、その予想は見事に裏切られました。
前半は皆の力を合わせて復興活動を成功させるという
希望の感じられる内容ですが、これが後半となると
胃が痛くなるような展開ばかりになっていきます。

明るく精力的で尊敬できるNGO職員であったジャンが
現場のストレスですり潰されていく様子は無惨の一言。
食料がないと殺し合い、食料があっても殺し合うのが
常識と化している国で一体何をすればいいのか。
教育環境があれば改善できるというのは分かっていても、
武装集団や少年兵がわんさかいる土地でそれをするのが
いかに困難なことかは考えるまでもないでしょう。

最終的にはノイローゼになってしまったジャンが
少年兵に向かって「ここを出ろ、そして生きろ」と叫び
撃ち殺されるという救いのない結末になっていますが、
この少年兵がジャンの言うことを聞いて投降したのには
ほんの少しだけ救われたような気がします。
結局のところ、教育で…ということですら理想論で、
一人一人をどうにかして助けるしかないのかもしれない。
今この瞬間も地獄のような現場で頑張っている
全ての方々の無事を祈らずにはいられない物語でした。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

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