2015/10/03

『淵の王』舞城王太郎 感想

淵の王
淵の王
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舞城 王太郎
新潮社
売り上げランキング: 28,701

疾走感のある文体が特徴な舞城さんの最新作。
ジャンルはホラー小説になるのでしょうか。
一口にホラーと言っても色々なパターンがありますが、
この本はなんだかよくわからない恐怖を描くタイプ。
有名な漫画「不安の種」に近い感じかもしれません。

本の構成としては3人の主人公を短編集なのですが、
どの短編も2人称形式で書かれているのが珍しいですね。
3人の主人公の人生をそれぞれ別の「私」や「俺」が
長い時間観察していくというのが基本的な話の流れ。
この「私」や「俺」の存在も不思議ではあるのですが、
語り口が軽快なのでそれほど怖さは感じません。

しかし不思議存在である彼らですら恐怖するような
出来事が起こるというのがこの作品の恐ろしいところ。
というかこの作品の場合、主人公たちは凄く勇敢で、
語り部である不思議存在の方が普通に怖がるという、
二人称を上手く生かした面白演出が生きています。
主人公を怖がらせるよりもこっちの方がいいかも。

1本目の短編は不思議現象は最後だけで、
むしろ人間こえー、さおりかっけーという感じ。
短い話の中で洗脳の怖さをズバッと描写しています。
これが2本目となると得体の知れなさは増加。
基本的にはスポーツ少女がある日漫画にはまって、
そのまま漫画家になるという青春ストーリーなのですが
ごく普通の話の合間合間に挟まれる得体の知れない
エピソードがいい感じで読者の不安を煽ってくれます。
友人である広瀬からグルニエの話が出てきたときは
物凄い寒気を感じて鳥肌立ちましたわ…。

そして3本目は最初からホラー全開ですが、
最後は割と綺麗に終わるという〆に相応しい物語。
内臓が破裂するまで犬を食い続ける女というのは
なんとなく舞城さんっぽいエピソードな気がします。
悟堂と湯川の再会シーンの切なさも舞城さんっぽい。
この話はストーリー的にはホラーなんですけど、
描写は恋愛物っぽくてそれほど怖さはなかったかな。

結局語り部がなんだったのかとか謎は残りますし、
そこら辺考察している人も多々いますが、
そういうところを深く考えずに読んでも楽しめますし、
舞城さんの作品にしては万人向けな気がしました。
舞城入門編としてオススメしやすい作品かもしれません。

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