2015/09/23

『純平、考え直せ』奥田英朗 感想

純平、考え直せ (光文社文庫)
光文社 (2013-12-06)
売り上げランキング: 9,944

下っ端ヤクザの悲哀を強く感じさせてくれる作品。

親からは放置され学もなく、暴走族で暴れていた純平。
そんな彼がヤクザになるのは必然と言えるでしょう。
しかしそのヤクザでも初戦は駒でしかなく、
最終的には鉄砲玉として使い捨てられることに…。

純平自身は喧嘩ッ早いものの気のいい兄ちゃんで、
真っ当な人生も送れたのでは…と感じさせるだけに、
読後感はかなり切ないものになっています。
いちいち手の甲にメモするところや
惚れた女に対してかっこつけようとするなど、
愛嬌のある描写を細かく入れてくるところはずるい。
本に対する反応も、もし真面目に勉強していれば…
という別の未来を想像させてくれます。
この魅力的な人物描写は流石奥田さんだと思います。

匿名掲示板の描写もなかなかリアルに感じました。
純平をネタに楽しもうとするものもいれば、
他人である純平を真面目に心配するものもいる。
この混沌とした状況はまさに匿名だからこそ。
このバランスの良さが心地良いんですよね。

ラストが尻切れトンボなのは最初読んだときには
少し物足りなさを感じたのですが、
読後しばらく純平の人生を考えているうちに
こういう終わり方が相応しい気もしてきました。
結末を見せるよりも、結末に向け走り出す姿の方が
やっぱり純平らしいように思えてきたので。
しかしこの苦味のある読後感…癖になりますね。

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