2015/09/02

『錆びた階級』波木洋 感想

錆びた階級
錆びた階級
posted with amazlet at 15.09.01
波木 洋
文芸社
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特にドラマチックな事件が起こるわけでもない
田舎の警察暮らしをみっちり描いた警察小説。
作者が元警視だけあって流石と思わされる描写が多いです。

まず主人公であるやり手警視が田舎へ飛ばされるのですが、
その理由も大したものではなく単に持ち回り転属が
自分の番になっただけというのが面白い。
警察官といえどサラリーマンであることが実感できます。
他にも警察官ならではな田舎務めでの鬱屈を描いていて、
細々とした新鮮さが退屈させない内容になっています。
田舎勤めに染まってダラダラと過ごす者もいれば
派手な活躍をしたい者や何も考えてない者もいて、
社会の縮図として見ると共感できる部分も多いですね。

主人公の警視のキャラが落ち着いているのもいい。
本質的には真面目で誇り高い警察官なのですが、
年を食っているだけあってそれを上手く隠しながら
世を渡っていく老獪さを持ち合わせています。
内心では愚痴ちながらも表面上はにこやかに
部下や上司に対応する姿に共感してしまうのは
自分も年を取ってしまったからか。

そんな感じで事件が起こらない割に面白い作品なのですが、
それだけに最後の終わり方はいただけない。
この作品、基本的には田舎のスローライフを見せつつも
田舎ゆえの油断に対する警告も書き続けていて、
それがいい感じで不安を煽っているのですが、
それが的中して大事件が起こったところで終わります。
本当に事件が起こっただけで結末はなし。
後は読者の想像にお任せということかもしれませんが、
折角ここまで手堅く面白い話だったんだから
最後まできっちり纏めて欲しかったです。
部下が死んだ後の警察の処理とか他では書けないような
掘り下げ方も出来たと思うだけに惜しかったです。

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