2015/05/23

『幻霙』斉木香津 感想

幻霙
幻霙
posted with amazlet at 15.05.22
斉木 香津
双葉社
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心に傷を抱えた青年・蒼太とちょっと鈍感な少女・桃里の
同棲生活を描いていくハートフルボッコ小説。
ええ、ハートフルボッコ小説です。

事の発端は繁華街で起こった無差別殺傷事件。
その犯人が母親に虐待されて育った青年だったことから
蒼太の精神のバランスが崩れ始めることに。
これがハートフル小説なら鈍感でも明るい桃里によって
蒼太が癒されていくことになるんでしょうけど、
実際はその逆で桃里の鈍さが蒼太を傷つけることに…。

物語は基本的に蒼太視点での過去語りが多く、
彼が母親に対して受けた虐待の話ばかりになるので
全体的に薄暗い雰囲気が漂っています。
虐待といっても暴力描写はほとんどないので
一見すると軽微なものに感じられなくもないのですが、
躁鬱病の母親に飴と鞭で弄ばれているような扱いは
子供の精神を病ませるには十分なものでしょう。
ひたすら虐待されるのとはまた違ったストレスです。

桃里はちょっと頭の足りない前向きな子という感じで、
馬鹿なりに蒼太を励まそうとするのですが、
馬鹿なのでいちいち的外れで即物的なんですよね。
本人は真面目に蒼太を元気付けようとしているのに
蒼太にまったく届いてないのが滑稽で哀れです。

ラストにちょっとしたどんでん返しはあるものの
ミステリーとしてはちょっと強引だった気が。
この作品の場合、ミステリーというよりも
どうしようもなく壊れてしまった蒼太が
じわじわ堕ちていく様子を楽しむ作品だと思うので
トリックなしの方がスッキリ纏まったかもしれません。
とはいえ、二人の関係がじわじわ崩壊していく雰囲気は
ゾクゾクしましたし、癖になりそうな作風でした。
こういう悲劇が見えてる作品、嫌いじゃないです。

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