2015/03/05

『SOSの猿』伊坂幸太郎 感想

SOSの猿 (中公文庫)SOSの猿 (中公文庫)
(2012/11/22)
伊坂 幸太郎

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伊坂さんお得意の二つの視点が絡み合う不思議な物語。
今回は副業で悪魔祓いを嗜む「私」の話と、
西遊記で有名な孫行者の話が交互に進みます。

「私」の方の話は現実メインで分かりやすい。
悪魔祓いという非日常設定はあるものの、
これ自体はいわゆる自己暗示や洗脳の解除といった、
悪魔祓いの一般的な理論の焼き直しでしかないです。
「私」の性格にしても他人の苦しみに敏感ではあるものの、
その根源は他人が苦しんでいる姿を見るのは嫌だという
単純なものなので共感はしやすかったです。
引き篭もり親子の描写についてもよくある話レベル。

逆に孫行者の話の方はファンタジック。
現代を舞台に品質管理の仕事をしている五十嵐真が
証券会社のミスの原因を探るという設定自体は現実的ですが、
この五十嵐の原因を追究し過ぎる性格は非現実的ですし、
孫行者関連の話となると幻想小説みたいな雰囲気です。

そんな二つの話が結びついて一つの結末に…
という定番の展開なのですが、孫行者関連については
結局ハッキリしないのでモヤッとした感じで終わります。
正直、実は幻覚でしたオチで終わると思っていただけに
本当に孫行者がいるような終わり方なのは予想外でした。
そういう物語があってもいいじゃないってことかな。

タイトルだけ見ると内容がまったく分からないんですけど、
いざ読み終わってみると、重めの設定でありながら
ライトな語り口と前向きな展開で元気になれる作品でした。
疲れたときに物語を妄想して気分転換するというのは
誰にでも有効だと思いますし、それを上手く出力して
他者まで楽しませることができるのが作家なんでしょうね。

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