2014/12/16

『金色の獣、彼方に向かう』恒川光太郎 感想

金色の獣、彼方に向かう (双葉文庫)金色の獣、彼方に向かう (双葉文庫)
(2014/11/13)
恒川 光太郎

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『鼬』に似た奇妙な生き物に関わる短編連作集。

元寇の時代のとある旅人の口から語られる「異神千夜」
この手の話は元軍の侵攻による悲劇的な話が多いですが、
この作品で本当に恐ろしいのは元軍の撤退後。
元軍の現実的な恐ろしさを描いていたのから一転して
得体の知れない巫女の不気味さがじわじわと出てきます。
この奇妙な転調感がたまらない。
不気味さがピークに達したところでスパッと
話を切るという終わり方も不安を掻き立ててくれます。

風天孔に魅せられた人々を描いた「風天孔参り」
よくわからん孔に飛び込んで現世から離れるという
限りなく自殺願望に近いものを持つ人々の物語ですが、
風天孔というよくわからんものを間に挟むことで
どこか神秘的な雰囲気を持つ作品になっています。
しかし前半のおっさんと美女の爛れた同居関係から
こういう話に持っていかれるとは予想外でした。
ここらへんでようやくこの作家さんの作風を掴めた感じ。

二人の少女の奇妙な関係を見せる「森の神、夢に還る」
風天孔参りもそうでしたけどちょっとドロリとした
俗っぽい人間関係から入ったのに、いつの間にか
幻想的な雰囲気に持っていくのが本当に上手い。
前半も後半も人の絆の脆さを書いているのは同じですが、
全体的に透明感のある雰囲気な文章のせいか、
救いがない話の割にはスッキリしているんですよね。

そして表題作である「金色の獣、彼方に向かう」
この作品では鼬を拾った少年・大輝が主人公なのですが、
今までの3作品は前半と後半でガラリと雰囲気を
変えていたのに対してこの作品は終始一貫しています。
話自体も不思議な生き物と少年の邂逅という定番のもの。
そこに死体が絡んできたり、猫の墓掘り人という
奇妙なおっさんが出てきたりはするものの、
話のオチはお約束の流れなので読後感は爽やかでしたね。
「異神千夜」や「風天孔参り」は結末が重いですし、
連作の最後にとしてはこれか「森の神」が相応しそうです。

それにしても恒川さんの本は今回初めて読みましたけど、
ドロッとした話なのに雰囲気は澄んでいるという
幻想小説としては実に自分好みの作品でした。
これはお気に入りの作家さんになりそうな予感がします。

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