2014/12/06

『炎帝 花山』萩耿介 感想

炎帝 花山炎帝 花山
(2009/12/12)
萩 耿介

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第65代天皇・花山を主人公にした歴史小説。
時代としては摂関政治で有名な藤原道長が台頭する直前。
とはいえ、既に藤原氏は朝廷の実権を握っていますし、
その藤原氏の権力闘争に巻き込まれて時の天皇が
次々入れ替わるという何とも忙しい時代でもあります。

萩さんの本は哲学的な雰囲気の作品が多いのですが、
それはこの本でも同様で、物狂いの冷泉天皇の息子として
産まれた火山は自身に流れている物狂いの血に怯えつつ、
自分というものを深く掘り下げていくことになります。

花山の行動自体は突然出家したり自分を燃やしたりと
他人から見れば冷泉譲りの物狂いそのものですが、
心理描写がいちいち上手くて共感させられるのは流石。
自殺や他殺を考えるほど仏の道を考え続けながら、
思考と行動が別々に動いてしまうというのも人間らしい。

物語後半でもう一人の主人公と言える役割を果たすのが
僧籍にありながら俗物として描かれる厳久。
花山が人の本能を突き詰めるために思考したのに対し、
厳久は俗欲のために思考するという感じでしょうか。
結果的には、二人ともこれが自分の生き方だと
満足して死んでいったというのは共通しています。
自分らしく真面目に生きるとはどういうことなのか。
読後に考えさせられる作品でした。

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