2014/08/19

『刻命』末浦広海 感想

刻命刻命
(2012/05/24)
末浦 広海

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…なんだかスッキリしない話だなぁ。

物語の発端は数十年前の学生運動の真っ最中。
剣術家だった主人公の弟弟子が兄弟子を殺してしまい、
主人公はその弟弟子を庇って刑務所に入ることに…
という導入部はなかなか新鮮で引き込まれます。
兄弟子は過激派に所属していて事件自体は正当防衛。
主人公も兄弟子の仲間を殺していて、このまま二人とも
捕まるよりはマシという考え方も理解できなくはないです。

そして現代。
ようやく仮釈放された主人公が不審な死を遂げた娘の
謎を追っていくというのが物語の本筋なのですが、
定番としてはこの謎が過去の事件にガッツリ絡んでくる
という流れになるんでしょうけど、この物語はその絡みが
妙に回りくどくて綺麗じゃなかったように思えます。

結末にしても、善良な登場人物ばかりの割に救われません。
個人的にバッドエンドが嫌いなわけではないのですが、
この物語の場合は悲しさよりも徒労感が強いです。
これは主人公サイドが抱えてる「殺人」という
罪の重さに対して、今回の事件を引き起こした側が
まったく関係ないところにいるせいでしょうね。
主人公サイドはそれなりに悩んではいるんですけど、
無粋な闖入者のせいで尻切れトンボに終わっています。

いっそのこと、現代の事件をバッサリカットして
殺人者である主人公が家族の理解を得るまでだけを
描いた方が小説としては一貫した物になったかも。
掴みが面白かっただけに残念でした。

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