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『信長の影』岡田秀文 感想
信長の影信長の影
(2011/03/16)
岡田 秀文

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稀代の英雄、織田信長に関わった様々な人物の物語。
相変わらず岡田さんの人物描写の切り口は面白い。

信長に対する嫉妬から関東を放り出し西進を開始する上杉謙信。
堂々たる体躯や態度に反して中身は小心者な浅井長政。
信長からの粛清を恐れるあまり謀反を企み始める柴田勝家。
基本的には豪快な感じで書かれることの多い3人なだけに、
そこらのおっさんのような感情が見られるのは新鮮。
しかし現代人としては共感しやすい心情描写ではあります。

織田信秀亡き後、信長の後見人的立場だった織田信光。
唐突な死の真相が謎に包まれている人物ですが、
この短編では無難な陰謀劇の範囲内に収まっている印象。
これはこれで面白いのですが、意外性は無し。

ある意味では信長の最大の敵であった足利義昭。
信長を憎み続けていた義昭が、信長が死んだことで
生きがいを失ってしまったという解釈は凄く好きですね。
義昭の境遇も凡人がなんとかして天才に立ち向かおうと
足掻いている感じが好きだったりします。

蒲生氏郷と織田信行は織田信長に憧れた二人という描写。
氏郷は才覚もあり世が世ならもっと活躍できたでしょうけど、
結局は何も出来ないまま死んだというのがちと哀れ。
この人は本気で天下を狙っていたと思いたい。
信長の嫡孫である織田信行は良くも悪くもお坊ちゃん。
秀吉に天下を奪われながらも秀吉からそれなりに大事にされ、
岐阜城を貰ってそれだけでも満足していたのに
更なる大活躍を夢見てしまったのが運の尽き。
まあ関ヶ原はホント、判断が難しかったでしょうけど。

ラストの土田御前の話は結構印象に残りました。
信長と信行の仲をなんとかして取り持とうとしたりと、
普通にいい人として書かれている土田御前は珍しいですね。
それだけにオチがかなり哀れなんですが。

しかしこれだけ書かれても信長という人物の底は見えない。
信長の短編集では信長自身は得体の知れない天才という
描写で終わるものが多いですが、そういう立ち位置が
一番似合ってしまう人物なのも確かなんですよね…。

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

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