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『利権鉱脈 小説ODA』松村美香 感想
利権鉱脈    小説ODA利権鉱脈 小説ODA
(2012/11/27)
松村 美香

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他国を支援するODAについて鋭く切り込んだ経済小説。
ODAというと、途上国にお金をばら撒くイメージですが、
実際に何をやっているかまではほとんど知らないのが現状。
そんな基本的なところから教えてくれる作品です。
情報量の多いので流石に全て分かったとは言えませんが、
とりあえずODAの流れについては把握できた…かな?

途上国のインフラ整備を日本の民間企業に受注させることで
途上国、日本の両方の利益を確保してきたODA事業ですが、
2000年辺りで官民の癒着や企業の金儲け主義が批判され
インフラ整備から人材育成での支援にシフト。
汚職を恐れるあまり今までの積み重ねを捨てるところは
極端から極端に走る日本人らしい判断というか。

しかし企業力によるインフラ支援では一流なものの、
企業の利益が出にくい人材育成には向かないのが日本。
会社の仕事でダムや道路を作るならともかく、
ボランティアに近い形で教育に関わるような仕事だと
まともに人数が確保できないというのはなんともお粗末。
一部の有志の活動が美談のように報道されていますけど、
実際の現場は人が少な過ぎてまともに動けてないというのは
国内での報道の偏りを感じさせてくれます。

更に日本が手を引いたインフラ支援には中国企業が入り込み、
日本の途上国に対する影響は大きく後退することに。
中国の他国への影響の増大はテレビでもよく報道されますが、
その原因がこんなところにあったとは気付かなかった。

その一方で国益を考えた支援というのも
純粋に途上国のためと言えないのはまた事実。
資源鉱脈に近い都市から優先的に開発された結果、
重要な問題のある都市でも放置されるという状況があるのは
投資へのリターンを考えると仕方がないような気も。
理想と現実の折り合いが非常に難しいというのも分かります。
ODA自体も無限に投入できるわけではないですし、
予算内で最大の結果を求められるのは企業と同じ。
圧倒的な資金力で鉱脈を買い漁る中国の脅威がある今、
もっと国が本腰を入れるべきという主張には納得です。
現在の国際状況を知る上で非常に参考になる小説でした。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

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