2014/05/28

『獅子は死せず』中路啓太 感想

獅子は死せず獅子は死せず
(2011/11/16)
中路 啓太

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大坂の陣で最も活躍したと言っても過言ではないのに
何故か一番影が薄い毛利勝永を主人公にした物語。

期間は大坂冬の陣直前から夏の陣まで。
歴史小説でここまで短期間のものは珍しいかも。
しかし結果的には期間を絞ったのは正解だったかと。
勝永自身の戦歴は豊富とはいえ突出しているのは
大阪夏の陣での武功ですし、朝鮮侵攻や関ヶ原での
戦いを描くよりも、敗北覚悟で大阪の陣に参戦した
その心境をジックリ見せたのが良かった。

中路さんの小説の主人公らしく、この小説の勝永も
自分の思い通りにいかない現実に振り回されます。
徳川に付こうと思ったら部下の暴走で失敗し、
大阪側についてみれば内部の権力闘争にうんざりし、
見てて同情してしまうぐらい苦労人人生です。

しかし困惑迷走しながらも前に進むのが主人公。
一時はアホらしくなって商人になるとか言いつつ、
勝利への光を見つけると賭けたくなるのが武士。
敗北の美学を徹底的に毛嫌いし、勝てるから戦うと
言い放つその姿は明るくて爽快感があります。
これは寄せ集めの兵でも士気が上がるのが分かる。

真田幸村が親父のコンプレックスを持ちまくる
小男として書かれていたのも面白かったです。
実力はあるのにそれが評価されなかったせいで
性格は歪んでいますけど、そんな幸村が勝永と
お互いを認め合い友情を育む展開は熱かった。
それに対して序盤に出番が多かった長宗我部盛親が
後半フェードアウトしてしまったのは惜しい。
こいつにも何か見せ場を与えて欲しかったなぁ。

今回の家康はただひたすら肥え太った豚ですね。
『うつけの采配』では武士の誇りを理解する
切れ者だったんですけど、あれと別の世界なのか、
それとも関ヶ原以後にボケてしまったのか。
同じ作者さんでも別の一面が見られるのは良い。

戦国末期のもっと評価されるべき武将、
毛利勝永の新たな魅力を書き起こした快作。
戦国時代最後の大戦を心底堪能できる一冊でした。

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