2014/04/08

『国を蹴った男』伊東潤 感想

国を蹴った男国を蹴った男
(2012/10/26)
伊東 潤

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伊東潤さんによる短編歴史小説集。
伊東さんの歴史小説は毎回、話の切り口から
オチまで私のツボを刺激しまくりですね。

「牢人大将」は武田家に仕える牢人部隊の物語。
自分の領地を持たず、金のために戦う牢人部隊。
しかし逃げ帰る土地もなく己の腕一本に
誇りを持つからこそ勇敢に戦える面もある。

「戦は算術に候」は石田三成と長束正家を
メインにしつつ関ヶ原の戦いを描いています。
小早川秀秋が裏切った真相がほんっとうに
くだらなくて、三成でなくても笑うしかない。

上杉家の内紛を描いた「短慮なり名左衛門」
伊東さんは本当に悪役兼続派なんだなぁ。
とはいえ、謀略家であるのは確かですし、
これはこれで魅力的な悪役なのは確かです。
本当にムカツクけど、そこがいい。

「毒蛾の舞」は賤ヶ岳の戦いのお話。
佐久間盛政のもとをを訪れた利家の正室まつ。
彼女が盛政にした頼みとは…?
自分が利家をあまり好きじゃない理由は
賤ヶ岳での立ち回りが大きかったりします。

茶人・山上宗二を主人公にした「天に唾して」
自らの茶の精神を決して曲げず、
常に秀吉に逆らい続けた宗二。
この場合の「天」とは秀吉のことではなく、
決して手に入らない理想像のようなもので、
それを追い続けたのは秀吉も同じ。
そんな行き方しかできない人間もいる。

表題作である「国を蹴った男」は
無能さで有名なかの今川氏真の物語。
戦国大名には全く向いてない氏真ですが、
鞠職人の視点となると途端に生き生きする。
生まれた時代や地位が悪かったというのは
分かりやすいテーマですが、ともすれば
愚痴っぽくなりそうなこのテーマを
これだけ爽快に見せられるのはお見事。
自然と笑顔が漏れてしまう終わり方でした。

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