2014/03/23

『戦国名臣列伝』宮城谷昌光 感想

戦国名臣列伝 (文春文庫)戦国名臣列伝 (文春文庫)
(2008/04/10)
宮城谷 昌光

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この本、ずっと前に読んだはずなのに
感想を書いてなかったことに気付いたので、
今更ですが書いてみることにしました。
といっても今回は戦国名臣短編集なので
各主人公についてザッと書く感じで行きます。

一番手である越の范蠡は、一番手にして
最も成功した名臣とも言える存在でしょう。
勾践を覇者へ押し上げた手腕はもちろん、
それ以上に引き際の華麗さが素晴らしいです。
まあ何をやっても成功する才能があるからこそ、
これだけサクッと引けるんでしょうけどね。

范蠡に対して悲惨な結末を迎えたのが呉起。
魏を一大強国へ成長させたという点では
范蠡と同じですが、その後は魏から追い出され、
ついには楚で命を落としてしまうことに。
王の寵愛なくしてはどんな名臣でも
宝の持ち腐れというこの時代の特徴を
身をもって示してくれたと言えるでしょう。

比類なき有名人でありながらその結末が
定かでないという不思議な人物である孫臏。
龐涓との戦いの決着は非常にドラマチックですが、
それ以後の話が全く出てこないのは謎過ぎです。
とはいえ、馬陵の戦いの美しい流れだけでも
歴史に名を残すには十分な功績なのですが。

商鞅はその結末が呉起とそっくりですね。
ただ、商鞅が良くも悪くも強引過ぎるせいで
恨みを買ったのも自業自得と言えるのですが、
商鞅の死後も秦がその政治方針を引き継ぎ
天下統一まで突っ走ったのは大きな違いです。
こうして見ると秦がズルく見えてくる不思議。

お次は縦横家として有名な蘇秦。
この人は名臣というより策謀家な印象ですね。
しかし口先一つで複数の国の方針を
振り回すというその能力にはただただ驚嘆。
この話では対秦同盟を主導していますが、
最近では対斉同盟も主導した説もあるのか。
最期はかなりしょっぱいですけど。

文武両道の名宰相・魏冄は常勝将軍・白起との
コンビで秦の強さを見せ付けた存在ですね。
この人も名臣というには我欲が強過ぎますが、
これだけの功績を残せたのも我欲ゆえでしょう。
ここまでやるなら王室を乗っ取るぐらい
やって欲しかった気もしますが。

名臣の代表と言える存在である楽毅。
宮城谷さんの作品には「楽毅」がありますが、
こちらではあらすじをサラッと書いた感じです。
恵王の召還に応じず、他国へ亡命したことで
かえって名臣として名が高まったのは皮肉。

楽毅のライバルと言える存在である田単。
あらゆる手段を駆使して即墨を維持した
その手腕はお見事ですが、この人も燕軍を
撃退した後は趙に亡命しているのが不思議。
宮城谷さんは襄王の嫉妬によるものだと
書いていますが、事実だったらやり切れません。

楚の詩人として有名な屈原ですが、
この短編の実質的な主人公は張儀でしょう。
宮城谷さんとしてはまともな屈原よりも
暗躍しまくる張儀の方が書きやすかったのか?
それでも国の未来に絶望して入水する姿は
臣下としての美しさを感じさせられます。

行く先々で故事を産みまくる藺相如。
完璧や怒髪天など、何気に日本語とも
縁が深い名臣ですが、彼が活躍できたのは
趙の恵文王、秦の昭襄王という二人の名君が
藺相如の信義に応えたからというのも事実。
やはり名君あっての名臣なんですよね。

そんな藺相如の良き相棒であった廉頗。
名将・白起に対抗できる数少ない人材でしたが、
かの有名な趙括の起用によって趙は衰退。
晩年も飼い殺しにされて…もう哀れとしか。
戦場で死んだ方がマシだったんじゃないか。

趙奢については閼与の戦いも有名ですが、
趙括の無能さを見抜いていたのも凄い。
もっとも、息子の無能さで有名になっても
親としてはまったく嬉しくないでしょうけど。
まあ、あれだけ諌められたのに起用した
孝成王の責任も重大なんですけど。

これ以降はずっと秦のターン。
常勝将軍・白起、遠交近攻の范雎、
奇貨を拾った呂不韋、楚を滅ぼした王翦。
ここまで来ると他の六国は押されっぱなし。
とはいえこの4人の中でも明暗は分かれていて、
白起、呂不韋は自殺させられたのに対して
范雎、王翦は上手く切り抜けています。

白起の死に方は凄く好きなんですよね。
40万人を殺しただけならただの強い将軍。
でも死に際の台詞を見るとそれだけじゃなく、
最強ゆえの悲哀のようなものが感じられます。

范雎は恨みパワーこわいとしか。
恨みパワーだけでここまでのし上がって
秦の天下統一を大きく助けちゃうとかこわい。
でも世界を巻き込んだ意趣返しって痛快ですよ。

呂不韋は宮城谷さんに愛されてるなぁ。
始皇帝の実の父説はデマだと一刀両断。
「奇貨居くべし」でもそうでしたけど、
宮城谷さんの呂不韋は知性溢れる文化人で、
現代人としては一つの理想像でしょう。

トリを務める王翦は范蠡と同じく、
対抗を立てながら上手く生き抜いた存在。
いや、疑い深い主君相手に付き合い続けて
見事に天寿を全うしたことを考えると、
その処世術の巧みさは范蠡以上かも?
戦いにしても白起ほどの派手さはないものの、
手堅さでは白起以上のものかもしれません。
そしてそんな彼が出てきた以上、他の国が
逆転する可能性はなくなったと言えるでしょう。

とここまで書いて気付いたんですけど、
多分前に感想書かなかったのって
これだけ長くなるからなんじゃないかなぁ。
適当に書いてもこれなんだもんなぁ。
で、でもまあ書いてて楽しかったので無問題。
やっぱこの時代の人物って面白いです。

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