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『道鏡-悪業は仏道の精華なり』三田誠広 感想
道鏡---悪業は仏道の精華なり道鏡---悪業は仏道の精華なり
(2011/05/20)
三田 誠広

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奈良時代の怪僧・道鏡が主人公の歴史小説。
この時代を題材にした本って少ないですよね。

内容としては東大寺の大仏建立から
称徳天皇が崩御して道鏡が引退するまで。
一般的に道鏡といえば当時の天皇を傀儡として
政権を握った大悪党というイメージですが、
この小説ではあくまで一人の僧という感じ。
それも悟りを目指すという目的を持ちながらも
出世欲や名誉欲も持つ非常に人間らしい僧。
知識と我欲と優しさを適度に併せ持った
感情移入しやすい人物として書かれています。

元々が僧であるだけに政治家としての能力や
目的に欠けているというのは分かりやすい。
僧としての度胸と能力で女帝の信頼を得て、
それを踏み台に出世したのはよかったものの、
実際に法王という地位についてみると
満足感とともに戸惑いを感じてしまうという
小物っぷりには妙な共感が涌いてきます。

宇佐神託事件での投げやりな対応も分かる。
実際に天皇になるチャンスが来たとして、
なりたい気持ちも少しはあるんだけど
それ以上に罪悪感や恐怖も凄かったりして
結局、和気清麻呂に丸投げしてしまう。
うん、なんか、なんか分かるぞこの気持ち。

そして最後は薬師寺へ左遷されながらも
本人としてはこの結果に満足している様子。
考えてみれば法王にまでなった後に引退して
田舎でゆっくり過ごすとか勝ち組でしょう。
歴史上の悪人として有名過ぎる道鏡を
複雑だけど感情移入しやすい人間として
掘り下げる…これもまた歴史小説の醍醐味。
派手な展開は少ないのに人物描写メインで
最後までしっかり読ませる小説でした。

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

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