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『信長影絵』津本陽 感想
信長影絵信長影絵
(2013/01/11)
津本 陽

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織田信長を題材にした歴史小説は数あれど
これだけ出来事メインな小説は珍しいか。

ハードカバーで分厚い本だけあって
信長に関する事は非常に細かく書かれていて、
そういう小さな事件の積み重ねによって
今まで他の媒体で知っていた信長像とは
少し違ったものが見えてくるのが面白いです。

例えば信長と信行の確執は有名ですが
この本では他の身内との血を血で洗う争いも
きっちりと描写されていて、結果的に
弟殺し自体の印象はかなり薄まっています。

一方で信長の生母である土田御前が
重要なポジションに置かれているのが面白い。
この本では信長の奇矯な行動の原因を
母親からの愛情不足に設定しているので
要所要所で土田御前が顔を出するんですよね。

母から愛されないまま成長したせいで
自分の命に確固たる価値を見出せず、
冷徹で優れた判断力を持ちながらも
博打的な暴走を繰り返す希代のうつけ者。
前半では吉野に救いを求めていましたけど、
吉野が死んでからはそれさえも諦めて
周りに空虚な悪意を撒き散らしながら
天下統一に向かって突き進む怪物になる。

後半に行くにつれて信長の心理描写が
少なくなり味気なくなっていくんですけど、
これも信長の空虚さを現しているのかと
ちょっとゾクリとさせられる一冊でした。

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

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