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『恥も外聞もなく売名す』中路啓太 感想
恥も外聞もなく売名す恥も外聞もなく売名す
(2013/06/21)
中路 啓太

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槍の勘兵衛こと渡辺勘兵衛を主人公にした一冊。

次から次へと主君を代え続ける渡り奉公。
戦国末期とはいえ、まだまだ腕の立つ侍大将を
求める声は多く、部下が主君を選べたこの時代。
増田長盛の家臣として名を馳せた勘兵衛は
藤堂高虎の請われてその配下に付いたものの、
次第に高虎との間が上手く行かなくなり、
ついには決定的な確執に…というのが話の大筋。

今回の主人公である勘兵衛。
題名に「恥も外聞もなく」とあるからには
汚い手でも使うのかと思っていたのですが、
実際はむしろ逆で他人から何を言われようと
自分の美学に殉ずる硬骨漢という感じでした。
だから主君の命令を無視して友人を擁護するし、
戦場で勝機と見れば独断専行で突っ走る。
一人の男としては羨ましい生き方です。

しかし主君である高虎にとっては厄介で、
最初こそ勘兵衛の男気に惚れていたものの、
徳川家に臣従する自分の小ささと比べると
じわじわコンプレックスが刺激されることに。
勘兵衛も勘兵衛で高虎がヘタレな行動したら
容赦なく責めまくりますし、そうなると
お互い折れることも出来ずグダグダになる。
これは器の大きい上司じゃないと厳しいなぁ。

一方で中盤までの勘兵衛のライバルである
増田兵部の生き様はなかなか見事。
最初こそ父の部下であった勘兵衛に対する
コンプレックス丸出しであったものの、
勘兵衛と戦うために旗本としての地位を捨て、
豊臣側に身を投じるその思い切りは
これまた一人の男として尊敬できます。
勘兵衛との決着こそ付けられなかったものの、
それでも満足げだったのは全てを捨てて
目標を突っ走った気持ち良さゆえか。
捨てられなかった高虎と比べると感慨深い。

己の心の声に正直に生きる者のかっこよさや、
そう生きていくことの難しさ、更には
その生き様に対する尊敬や嫉妬や混乱まで、
丁寧に書き切っている一品でした。
こういう生き方には憧れるものの、
こう生きたいかと言われると…難しいなぁ。

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

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