2013/07/05

『唐玄宗紀』小前亮 感想

唐玄宗紀唐玄宗紀
(2013/02/28)
小前 亮

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タイトルを見ると唐の皇帝であった玄宗が
主人公のように見えますが、この本の実際の
主人公は玄宗の側近だった宦官、高力士。
常に玄宗の側に居続けた高力士の目から見た
玄宗という人間の姿を描く一冊となっています。

私の場合、宦官といえば奸臣というイメージが
強かったのですが、この本の高力士は
そんなイメージの真逆をいく忠臣っぷりです。
陰謀家ではあるものの全ては玄宗のため。
玄宗を影から支え続け、玄宗の死とともに
自らの命を絶つ生き様には胸が熱くなりました。

玄宗という人間の描写も面白いですね。
ただただ人を信頼し、全てを任せるその方針は
忠臣が揃っている間は上手くいっていたものの、
晩年は楊国忠、安禄山といった梟雄の台頭を
招いてしまったという解釈には納得できる。
もちろん部下を処分できなかったという点では
皇帝には相応しくなかったんでしょうけど、
それでもこの優しさは嫌いにはなれないです。
高力士とは本当に仲良かったんだなぁ。

ある意味、玄宗以上に有名な楊貴妃については
美人ではあるものの普通の女性という描写。
欲はあるものの、物語前半で登場する武則天や
太平公主といった女性と比べると普通です。
ただ、登場するタイミングが悪かった。
単純に玄宗イチャついていただけとはいえ
彼の覇気を弱める原因になったのは確かですし
楊国忠の独裁を呼び込んでしまったのも事実。
その歪みが回りに回って、最後には彼女を
殺してしまうというのがやるせない。

しかし小前さん、昔の作品ではラストシーンが
おざなりだったんですけど、最近の作品では
いい感じで切なく〆るようになりましたね。
英雄の全盛期から晩年まで、その人物の人生を
きっちり書いていただけるのはありがたい。
今後が楽しみな作家さんの一人です。

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