2013/01/16

『悪意の手記』中村文則 感想

悪意の手記悪意の手記
(2005/08/30)
中村 文則

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人を殺すということを掘り下げている一冊。

まずは手記1。
難病に冒された主人公が自分の外の世界を
恨みまくるものの突然全快してしまい、
恨みのぶつけどころを失ったまま
うっかり親友を殺してしまうという内容。
あらすじで見るとなんじゃそりゃなんですけど、
心理描写が丁寧で妙に引き込まれます。
憎しみをバネにして病気と闘っていたせいで
治った途端急激に虚脱するのは面白い。
その虚脱した心を唯一動かしたのが
突発的な殺意というのがなんとも皮肉です。

次に手記2。
相変わらず虚無的に生きるな主人公ですが、
悪友や大事な女性もできたことで
徐々に人間らしさを取り戻して行きます。
しかしそこで立ち塞がるのが罪悪感。
人を殺すことで虚無から脱した主人公が
人を殺したという罪悪感が原因で他人との
距離を置きたがるというのがこれまた皮肉。
罪悪感が人の形を取るのはちとありがちか。

最後の手記3。
娘を殺された母親の復讐を助ける主人公。
結局復讐は達成できなかったものの、
その代わり一人の女の子を助けた主人公は
少しだけ爽やかな気分で自首することに。
しかし結局病気は再発し、人を殺したという
恐怖も薄れることのないまま終わります。
人を殺してしまうと取り返しが付かないという
着地点は納得できる反面、物足りなさも。
感情移入はしやすいのですが、物語としては
未知の結論を出して欲しかった気もします。

でもストーリーは目が離せませんでしたし、
所々どんでん返しもあって楽しかった。
雰囲気は暗いですがそこがまた大好きです。

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