『幽霊たち』西澤保彦 感想
幽霊が出てきたり幽霊視点で進んだりする不思議小説。
西澤さんといえばこの手の不思議な作品の
名手という印象ですが、今回は微妙だったかな。
まず序盤、主人公がいきなり見知らぬ人物から
殺人事件の関係者扱いされて、幽霊と話し合いながら
記憶を遡っていくという掴みは良かったです。
主人公は60歳近い初老の男性ですけど、
幽霊の方は昔死んだ少女の姿のままという組み合わせも、
この後の記憶を遡るという展開にはピッタリでですね。
過去編に入ってからも悪くはないのですが、
途中で一人二役ネタに気付いてしまったので
ちょっと消化試合的な読み方になってしまいました。
一応、放火事件の真相追及や拳銃騒動など
他にも盛り上がりそうな場面はあったものの、
その前提である複雑な家庭環境や友人関係の描写が
いまいち中途半端な印象で話に入り切れなかったです。
同性愛やら女装やらドロドロしてはいるんですけど
どこかあっさりしていて熱中できないというか。
最後のオチが、全ては複雑過ぎる家族関係から来た
誤解による殺人だったというのも微妙でしたね。
めちゃくちゃ回り道した末の行動に
意味がなかったというオチは…ちょっとしんどい。
凹むことすらなくホント「無!」って感じです。
家族関係やギミックは複雑だったんですけど、
面白さよりも徒労感が強かったのが残念でした。