FC2ブログ
2018/08/24

『路地裏ビルヂング』三羽省吾 感想

路地裏ビルヂング (文春文庫)
三羽 省吾
文藝春秋 (2013-01-04)
売り上げランキング: 790,166

古ぼけたビルヂングの中にある6つのテナントの物語。

まず最初は5階にある訪問販売屋のお話。
胡散臭い健康グッズを販売するグレーな会社ですが、
そんな会社でも入ってしまったからには働くしかない。
主人公は馬鹿で軽薄で無神経な若者ですが、
彼なりに真面目に働く姿はどこか清々しいです。
後の短編でもちょくちょく顔を出すのですが、
取り巻きができる程度に出世しているのが微笑ましい。

他の作品も自分の今の立場に悩みながらも
最後は前向きに生きていくというパターンなのですが、
どの作品も主人公の立場が違っていて面白かったです。

仕事が好きという気持ちに自信が持てない
無認可保育園のおばちゃん先生。
良い学歴を持ちながらも就職に失敗して
自分に言い訳しながら零細塾の教師をしている若者。
不動産会社の相談窓口という単調な仕事に飽きて
身近に非日常を求めるテレフォンレディ。
小さな広告会社で大きな仕事を請け負おうとして
一人でムキになって走り回っている広告マン。
そして最後はビルができる前の万屋時代から
ビルのオーナー一族に仕えてきた老人。

それぞれの悩みは他人から見れば小さなものですが、
それだけに共感しやすいものばかりでした。
主人公たちの違う階の店子という緩い関係も面白く、
名前の出ない脇役でも誰か分かるのは楽しかったですね。
仕事に疲れた時に読むと少し前向きなれる作品です。