『ケムール・ミステリー』谺健二 感想
谺健二さんの久々の新作です。
奇妙な館でケムール人の仮面を被った引き篭もりが
次々と自殺するというへんてこな事件が発生。
偏屈な玩具屋である鴉原とその知人である多舞津は
更なる自殺者の発生を防ぐべく屋敷を向かうことに…。
というのが本作の導入部ですが、
ケムール人という単語から分かるように
古き良き特撮職人であり芸術家でもあった
成田亨が深く絡んで来るのが大きな特徴ですね。。
作品としては正統派の新本格ミステリー。
仮面を使った入れ替わりネタや大掛かりな仕掛け屋敷、
更に怒涛の如く流れる特撮や引き篭もりに関する薀蓄と、
これだけ新本格らしい作品は久々に読んだ気がします。
仮面による中の人交代ネタは読めてたんですけど、
これはむしろ読ませるためのネタという感じですね。
ミステリー好きなら更なる仕掛けを期待するでしょうし、
実際その期待に応えるどんでん返しを味わえました。
助手役である多舞津は助手としてはかなり鈍い方ですが、
いざというときの行動力は評価できる部分もあります。
探偵役である鴉原との関係は一見ギスギスしているのですが、
多舞津は鴉原の無茶振りに文句を言いながらも答えたり
鴉原は妻を失った多舞津を憎まれ口で激励したりと、
これはこれでいい関係なのかもしれません。
新本格ミステリーとしては直球ど真ん中なのですが、
最近こういう作品は読んでいなかったので新鮮でしたし
谺健二さんが久々に新作を出してくれたのも嬉しい。
寡作でもいいので今後も出し続けて欲しいところです。