2017/07/06

『竜が最後に帰る場所』恒川光太郎 感想

竜が最後に帰る場所 (講談社文庫)
講談社 (2013-10-11)
売り上げランキング: 57,294

5本の短編からなる幻想短編小説集。
構成としては、最初の作品は幻想要素少なめで
後半は完全にファンタジーという流れになっています。

自分が一番好きだったのは2本目ですね。
主人公が自分の母親を殺した男を監禁し、
時間をかけて洗脳して正義の味方にするという
本来ならサイコホラー寄りの内容ではあるのですが、
主人公の心情描写が淡々としているせいか、
他の幻想小説に通じる静謐さのある物語になっています。
肉体や精神に苦痛を与える復讐は数多くありますが、
正義の味方にするという復讐方法も新鮮でした。

他に1本目や3本目も人間を主人公にしていたのに対して、
後半の4本目と5本目は非人間が主人公なのが興味深い。
4本目は人に寄り添う形で、5本目は人の前から
姿を消すという逆方向に進んでいくのも面白いです。
どちらの結末も爽やかな読後感でしたし
どちらが巻末を飾ってもおかしくないと思うのですが、
話の壮大さを優先して竜の話になったのかな。

タイトルになっている「竜が最後に帰る場所」ですが、
このタイトルの作品が収録されていないのは珍しいかも。
この言葉は5本目の短編に出てくるものですけど、
確かに5本目のタイトルである「ゴロンド」は
表題にするには意味が分かりにくいですね。
逆に5本目のタイトルとしては「竜が最後に帰る場所」より
「ゴロンド」の方が相応しいような気がします。
ここはよく考えて作られた本だなと。

恒川さんの本を読むのは2冊目ですが、
今回も人間のドロッとした部分を書きつつ
美しい幻想的な雰囲気を作るのが本当に上手いですね。
この季節、雨の音を聞きながら読むのに最適かもしれません。