2017/06/03

『天下一の軽口男』木下昌輝 感想

天下一の軽口男
天下一の軽口男
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木下 昌輝
幻冬舎 (2016-04-07)
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上方落語の祖ともされる米沢彦八の物語。

文化面の偉人でありながら大衆落語というジャンルゆえに
その実態がほとんど知られていない米沢彦八ですが、
だからこそ作者が自由に書くことができる面もありますね。

この本の彦八の物語は分かりやすいサクセスストーリー。
江戸時代初期の落語界と聞くととっつき辛そうなお題ですが、
話が分かりやすいためすらすら読み進めることが出来ます。
落語の一門というと今でこそ文化エリートとはいえ、
落語がなかった時代に話で身を立てるのがどれだけ大変だったか。
そんな不可能と思われていた夢に人生をかける彦八の姿には
呼んでいるこちらまで勇気付けられました。

ただ、安楽庵策伝関連の使い方は微妙だった気がします。
彦八の話だけでは話が広がらなかったのかもしれませんが、
策伝と彦八の繋がりはどうもとってつけた感が強い。
これはこの繋がりが中盤で決着が付いてしまって
終盤には出てこなくなるというのが大きいかも。
序盤であれだけ意味深に結構なページ数で語ったんですし、
終盤にももう一押し、面白い絡みが欲しかったです。

しかし木下さんの作品といえば「人魚ノ肉」のような
ドロドロした歴史ホラーなイメージだったのですが、
今回のような明るくて前向きな作品も書かれるんですね。
これはこれで読みやすいので悪くないのですが、
自分はやはり重苦しい歴史ホラーの方が好みだったりします。