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『親鸞』三田誠広 感想
親鸞
親鸞
posted with amazlet at 17.02.09
三田 誠広
作品社
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浄土真宗の開祖として有名過ぎる親鸞の物語。

この作品の親鸞は基本的にはクソ真面目な求道者ですが、
自分でもそれを自覚していて要所要所で
その真面目さから脱却しようとしているのが面白いです。
教義である仏を信じれば悪人でも救われるというのは
当時としては型破りな考えだったわけですが、
本人も修行の場である比叡山を降り肉を食べ妻帯するなど、
端から見ると破戒僧と思えるような行動を取っています。

ただ、こういった行動も師の法然から真面目過ぎると
注意されたせいであり、その結果真面目にハメを外そうと
行動している姿にはどこか愛嬌を感じますね。
最初から衝動のままに行動するのではなく
何事も考えてから行動する真面目さは一貫しています。

しかし肉食妻帯という民衆に近い行動こそが親近感を生み、
じわじわと勢力を拡大していったというのは納得。
当時の民衆や武士からすれば仏に救われるのは
厳しい修行をする僧だけで、それがかえって仏に対する
信仰心を遠いものにしていたのかもしれません。
本作では、親鸞の師である浄土宗の法然や
高野山や善光寺の聖などを絡めることによって、
知的階級だけのものであった仏教が民衆のものへと
少しずつ変化していく流れを分かりやすく描いています。

そんな親鸞も私人としては褒められたものではない。
自分も父親の愛情を受けられなかったとはいえ、
自分の息子に対しても親としては放置同然の対応ですし、
その結果息子が邪教に走ってしまったのは手痛い失敗です。
他人から見ると穏やかで尊敬できる聖人なのですが、
身内に対して激しい愛情を表せなかったのは
彼にとっては大きな欠点だったのかもしれません。

貴族から武家へ権力が移り変わる大きな流れと、
それに伴う末法思想による仏教の変化を絡めつつ、
親鸞という人物を深く掘り下げた読み応えのある作品でした。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学