2016/06/26

『菅原道真 見果てぬ夢』三田誠広 感想

菅原道真 見果てぬ夢
菅原道真 見果てぬ夢
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三田 誠広
河出書房新社
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学問の神としても有名な菅原道真を主人公にした物語。

この本の道真は若干アスペルガー気味で、
儒者としての勉学に対しては才能を発揮するものの、
人付き合いに関してはかなり下手っぴに描写されています。
特に恋に対する無知っぷりは何度も描写されていて、
嫁への扱いはかなり身勝手なものとなっています。
身勝手といってもそれは暴力や暴言といった手段ではなく、
一人の知人としては大事にしているものの
嫁としての愛情は欠片も持ってはいないという感じで、
そのくせ子供はポンポン産ませるんだから性質が悪い。

そんな道真が女性同士の争いに巻き込まれて
左遷させられたというのはある意味自業自得なのか。
上皇の信を得て政治に関しては果断に対応する道真ですが、
上皇以外への根回しをこれっぽっちも考えてなかったせいで
かつて様々な名臣が辿った哀れな末路を行く破目に…。
いくら文官として有能だったとしても、
出世した自分が孤立しているのを分かっていながら
何一つ有効な手を打てなかったところを見ると、
政治家には向いていない人物だったのかもしれません。

しかしそんな道真が最後に都を離れるにいたって
初めて妻への愛情を自覚するシーンにはホロリとしました。
男の身勝手さ丸出しなシーンではあるのですが、
今まで恋がわからないと主張し続けてきた道真だけに
この変化は胸に来るものがあります。

そんな感じで道真への感想ばかり書いてきたのですが、
それとは別に恐ろしかったのが藤原淑子・高子姉妹の
皇室を舞台にしたドロドロの権力闘争ですね。
在原業平と高子の悲恋は最初かわいそうと思っていたものの、
高子が年を取ってもその恨みに縛られ続けて
そのせいで皇室までぐちゃぐちゃになったのを見ると
女の恨みこえーという感想しかなくなってしまいました。
ひたすら尽くす女であった道真の嫁と、
恨み骨髄な藤原姉妹の対比もこの本の見どころかもしれません。