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『ラ・ミッション ―軍事顧問ブリュネ―』佐藤賢一  感想
ラ・ミッション ―軍事顧問ブリュネ―
佐藤 賢一
文藝春秋
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フランス人でありながら幕府軍の味方として
箱館戦争にまで付き合ったジュール・ブリュネの物語。
幕末小説もフランス小説も書いている佐藤さんにとっては、
両要素を併せ持つブリュネは書きやすい素材なのかもしれません。

この辺りの歴史小説となると大抵は会津や新撰組がメインで、
彼らの悲劇的な結末を描いたものが多くなっている…というのは
この前、榎本武揚の小説の感想でも書きましたが、
それだけにフランス人視点で見るこの小説は新鮮でした。

幕府に肩入れしていたフランス軍人としては
鳥羽伏見以降の慶喜の行動を歯がゆく感じるのは当然でしょう。
フランスが作り上げた陸軍を活躍させたくても
肝心の慶喜が戦意喪失しているからどうしようもない。
だからこそ、この状況で足掻こうとする幕臣たちを
応援したくなる気持ちは分からなくもないです。
本作のブリュネはメンタル面でかなり日本人に近いですが、
実際の彼の行動もかなり日本人的なものですし、
本当に日本の侍に近いような思想の人だったのかもしれません。
この時代屈指の武士である土方との友情も熱かった。

もちろん日本人との違いもあって、
その最も大きなものがイギリスへの敵意でしょう。
作中のブリュネは友情を愛する熱血漢なのですが、
イギリスのこととなると途端に悪口ばかりになるのが面白い。
それなりに理屈を付けてはいるものの
一番の原因は単純に気に食わないってだけっぽいですが、
そういうところがあるのも彼の人間的魅力だと思います。
まあ、大人としては外交官組の小賢しい政治方針にも
共感できてしまったりするのですが。

オチに関しては個人的にはありですね。
歴史物とはいえ小説ですし、これぐらいのお遊びは望むところ。
その後の彼の活躍を見たくなってしまうのが困り物ですが…。

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学