2015/12/15

『バナールな現象』奥泉光 感想

バナールな現象 (集英社文庫)
奥泉 光
集英社
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面白い。
けど非常に感想を書きにくい小説。

ストーリーの大筋として平凡な大学講師である木苺が
妻の妊娠をきっかけに壊れていくというだけなのですが、
様々な要素がごった煮で時に眩暈するような小説になっています。

木苺の日常描写や話の結末は純文学に近いんですけど、
謎の尾行者や愛人の手紙の真相はミステリー的な展開ですし、
更に時事ネタや社会学、宗教なども混じってくるので
エンタメ小説としても最後まで飽きずに読めるんですよね。
湾岸戦争とかワープロとかめちゃくちゃ懐かしい。

奥泉さん特有の幻想ネタはこの作品でも見ることが出来ますが、
いつものホワホワした感じではなくホラー色が強いので、
疲れているときに読むと精神が病んでしまうかもしれません。
謎の海老プッシュにはいい感じでゲンナリさせられました。

20年前の小説ですし、この本と比べると奥泉さんの
最近の小説は随分洗練されて読みやすくなったと思います。
しかし詰め込めるだけ詰め込んでやろうという勢いについては
この本が上で、書き手の若さが感じられる内容でした。
好き嫌いでいうなら…今も昔も好きですね。